皆さんが名前を思い浮かべる企業は、多くの場合「大企業」ではないでしょうか? でもその数はわずか1%以下。日本の企業数の99%以上は実は「中小企業」なのです。つまり、日本経済の活性化にも、皆さんの就職活動や社会人人生にも、中小企業の動向というものが深く関わっているのです。
そんな中小企業は、一体どのような経営行動をとっているのか、大企業にない強みとは何か、経営者はどのように意思決定をしているのか等を学ぶのが「中小企業経営論」です。例えるなら、大企業の研究は"オリンピック選手を強化する"ための研究、そして中小企業の研究は"一般人の体力を高める"ための研究といったところでしょうか。
ゼミでは中小企業経営論の基本的な理論を学びつつ、いくつかのグループに分かれて研究を行っています。希望があれば、懸賞論文やビジネスコンテストにも積極的に参加します。
例えば今年度、「地方創生」をテーマにしたグループでは、地域経済活性化に寄与するために、信用金庫が蓄積している情報・人脈を生かした経営モデルを考えました。このグループは、多摩信用金庫をはじめとする都内の4つの信用金庫に幾度もヒアリングを重ねて論文に仕上げ、商工総合研究所主催の中小企業懸賞論文に応募しました。昨年度、山本ゼミでは同懸賞論文で準賞を獲得しており、今年度も期待が高まります。ほかにも、「多摩の学生まちづくりコンペティション」では二年連続で優秀賞を獲得しています。「知財活用アイデアプレゼン全国大会」の予選会in西武信用金庫では優秀賞を受賞しました。全国大会出場チームにも選抜され、ファイナリスト賞も獲得しています。学生の活動は様々なかたちで評価されています。
あらゆる経営学の理論は、日々の企業の営みから構築されたものです。「理論を学ぶこと」と「実態を知ること」の両輪があって初めて経営学を理解できると言ってもいいでしょう。
もちろん、やみくもに現場に行けばいいというわけではありません。既存研究や理論をしっかりと学び、自ら仮説を作り、それを実証するための「実態調査」です。今年度だけで、すでに15回もヒアリング調査に出かけた学生もいます。
最近では、ゼミ生たちが私の紹介に頼らずに、自らどんどん人脈を広げています。先方と築いた良好な人間関係や、社会人と接する際のマナーなども、先輩が後輩にしっかりと引き継いでくれているので、非常に頼もしく感じています。
今年度、多摩地域の活性化のために「水」に注目したグループがあります。「この地域では、玉川上水をはじめとする豊かな水資源によって地場の日本酒や野菜、武蔵野うどん等が生まれた。ならば、その魅力を体感できるツアーを企画すれば、交流人口を増やせるのでは」というわけです。
この研究は、多摩地域の日本酒の酒蔵のことを知った学生が「大学の近くにこんなに素晴らしい所があるなんて」と興味を持ったことから始まりました。そして、多くの企業や自治体にご協力いただき、ついにツアーの実施までこぎつけたのです。先ほど述べたように、学外でも評価され、今年度の多摩の学生まちづくりコンペティションで二年連続の優秀賞を得ました。今年度のゼミ生たちの学びに対するひたむきさ、熱量は見ていて時に羨ましくなるほどです。
日頃、私が学生に口を酸っぱくして言うのは、「ロジカルにものを考えなさい」ということです。論理的思考力、すなわち、問題の所在を正しく理解し、分析し、その解決策を考える力は、社会に出てからも必ず役立つ皆さんの"武器"になりますから。
大学時代というのは、間違えても失敗をしても非効率的でも許される貴重な時代です。その素晴らしい時間を使って、ゼミや部活、学校行事など、何か一つのことを徹底的に突き詰める努力をしてほしいと思います。それは、皆さんがこれからの人生を生き抜くバネになり、自信になり、そして大切な思い出になるはずです。
※掲載されている教員・学生の所属学部・職位・学年及び研究テーマ等は、取材当時のものです。