サイト内検索

Search

2016年度 第23回 コミュニケーション学部 小山 健太 専任講師

「職に就く」というよりも「社に入る」のが日本人です。コミュニケーション学部 小山 健太 専任講師 「職に就く」というよりも「社に入る」のが日本人です。コミュニケーション学部 小山 健太 専任講師

Koyama Kenta
東京経済大学 コミュニケーション学部専任講師
慶應義塾大学総合政策学部卒業。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 修士課程修了。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 単位取得満期退学。博士(政策・メディア)。著書に『日本企業で働く社員の「学校から仕事への移行」プロセスにおけるキャリア論の構築』。主な研究分野は、組織心理学、キャリア心理学。主な担当科目は、組織コミュニケーション論、キャリア開発論ほか。

「組織コミュニケーション」とは何ですか?

 皆さんは、部活やアルバイト先などの人間関係で揉めたことはありませんか? あるいは、社会人が上司や同僚との関係に悩んでいるという話を聞いたことはないでしょうか? 「組織コミュニケーション」とは、何らかの共通する目的を達成するために集まっている集団(=組織)の中でのコミュニケーションのあり方を考える学問のことをいいます。
 経営学が "社長"の目線でものを考える傾向であるのに対し、組織コミュニケーション論は、「もっとイキイキ働くには」「多様なバックグラウンドのメンバーでチームワークを築くには」など、一人ひとりの"社員"の立場に立って考える学問ともいえるでしょう。

日本企業の組織の特徴、強みとは?

 欧米の会社の多くが、明確な職務に人をあてはめる「ジョブ型」(いわゆる"就職")であるのに対し、日本の会社の多くは、まず人ありきで職務は限定されない「メンバーシップ型」(いわゆる"入社")の組織といわれます。それぞれ長所・短所はありますが、私は日本型組織の最大のメリットは「現場からイノベーションが生まれやすいこと」だと考えています。
 ヤマト運輸の事例を見てみましょう。いまやおなじみの「スキー宅急便」は80年代初め、長野の営業所の社員が「スキー板を担いで移動するのが大変そうだから」と発案し事業化されたものだそうです。トップダウンで指示された仕事だけをこなしていればいいという意識ならば、この事業は決して生まれなかったでしょう。「より良い商品・サービスを社会に提供したい」「この会社を良くしたい」という現場社員の高いモチベーションは、日本の企業の大きな強みなのです。

進まない女性活用、ブラック企業などの問題も耳にしますが......。

 「社会」が変われば「組織」が変わり、組織が変われば「仕事」も変わります。いま日本企業が抱える諸問題は、メンバーシップ型モデルの新たなあり方が問われている、ということでもあります。
 例えば女性活用の問題は、戦後に形成されたメンバーシップ型モデルの負の側面の一つでしょう。国や企業が男性を主戦力と捉えていた時代を経て、いまや女性の進学率やキャリアに対する意識は様変わりしました。今日の男性管理職には、自身の時代とは大きく異なるマネジメントが求められているのです。
 またブラック企業の問題は、メンバーシップ型の働き方を会社が悪用した結果です。職務が明確でない分、あれもこれもと過密な労働を押し付けてしまったのです。かつてのような安定的成長が望めないいま、どのような人事メカニズムが望ましいのか、私自身も新たなモデルの提唱に挑戦しているところです。

グループ研究では、どんなテーマに取り組んでいますか?

 3年生は2つのグループに分かれて研究しています。テーマは「メンバーの主体性が集団浅慮(集団で考えることによって適切な判断がなされない現象)に与える影響」「上司の言動が部下のワークエンゲイジメントに与える影響」。問題意識を明確にし、先行研究を検討し、仮説を立て、調査・分析して論文(1万字)にまとめるという研究活動に1年間かけて取り組みます。これは、もちろん簡単なことではありませんが、皆で試行錯誤しながら頑張っています。
 ただ学部生ですから、仮説通りに結果を出すことはそれほど重視していません。むしろゼミでは、仮説通りに結果が得られなかった原因をしっかり考えるという経験をしてほしいと思っています。その経験を通じて、卒業研究や卒業後の仕事でうまくいかないときに、新しいアイディアを生み出す心構えと能力を養えるからです。

高校生に向けてメッセージを。

 「大学は遊ぶ所だ」という人もいますが、大学全入時代のいま、大卒ということだけではもはやブランドになりません。そして、4年間で「何をどんな深度で学ぶか」は君たち一人ひとりに委ねられています。この時期の努力の量、時間の使い方次第では飛躍的に成長できます。東経大、特にコミュニケーション学部は、少人数教育が特長で教員との距離も近いですからどんどん活用してください。主体的・積極的に学ぶ心意気のある学生をお待ちしています。

Students'VOICE小山ゼミの学生の声

鈴木康史さん(コミュニケーション学部3年)
「三人寄れば文殊の知恵」というけれど、人が増えることでうまくいかないこともあるぞと思ったのが研究の出発点です。僕らの研究のポイントは、リーダーのみならずメンバーにも注目した点です。
萩原 遥さん(コミュニケーション学部3年)
アルバイト先で感情的に怒る上司がいて、「ワークエンゲイジメント」という概念に興味を持ちました。アンケート調査では、家族や先輩のツテで約70人もの社会人にご協力いただきました。
田口 舞さん(コミュニケーション学部3年)
グループ研究では、データ分析をしている真っ最中です。仮説通りに結果が出るわけではなく、論文の着地点は未だに見えません。大変ですが、その分やりがいがあります。
根津健太さん(コミュニケーション学部3年)
4月からグループ研究に取り組んでいますが、先行研究の学習、アンケート調査や分析と、一段階進むたびに新たな課題が立ちはだかります。あと少し、頑張ります!
土屋圭紀さん(コミュニケーション学部2年)
僕は集団行動が苦手なので、皆で考えを共有し同じ歩幅で進めるグループ研究はとても大変です(笑)。でも同時に、一人ではできないことを協力して成し遂げることの大切さも感じています。
竹本広樹さん(コミュニケーション学部2年)
これまで勉強といえば与えられたことをやるだけでしたが、小山ゼミで初めて自ら進んで学ぼうという気になりました。春休みに博報堂の関連会社に見学に行ったことも刺激になりました。

※掲載されている教員・学生の所属学部・職位・学年及び研究テーマ等は、取材当時のものです。