サイト内検索

Search

2016年度 第24回 現代法学部 村 千鶴子 教授

あなたの肌だって「消費者法」に接しています。現代法学部 村 千鶴子 教授 あなたの肌だって「消費者法」に接しています。現代法学部 村 千鶴子 教授

Mura Chizuko
東京経済大学 現代法学部教授
名古屋大学法学部法律学科卒業。弁護士。平成26年度消費者支援功労者内閣府特命大臣表彰。2010年から日本消費者法学会理事を務める。著書は『誌上法学講座----割賦販売法を学ぶ』、『消費者契約紛争ハンドブック 第3版』(共著)、『これで安心 だまされない!----35のQ&A』ほか。主な担当科目は、基本消費者取引法、リーガルリテラシー、大学入門ほか。

「消費者法」って、どんなものですか?

 私たちは日常生活のあらゆるところで、知らず知らずのうちに「消費者法」と接しています。例えば、お茶やジュースの容器に「トクホ」の表示を見たことがあるでしょう? スマホを契約した時、本体の料金は分割払いではありませんでしたか? また、家にやってきたセールスマンに「買わないので帰って」と言ったのにもかかわらずしつこく勧められて契約してしまった、という話を聞いたことはありませんか? これらの事例はそれぞれ、「食品表示法」「割賦販売法」「消費者契約法」「特定商取引法」「景品表示法」といった様々な法律が関係しています。このように、事業者に対する規制をしたり、消費者と事業者間で起こった問題を解決したりするための法律をまとめて「消費者法」と呼んでいるのです。

どうして、消費者法は必要なのですか?

 会社などの事業者と私たち消費者との間には、「情報量」や「交渉力」に絶対的な格差があるからです。例えば、スマホの契約時、あるいはアパートを借りる時、皆さんは契約内容を細部まで理解していますか? 契約書の中にもし消費者にとって不利益な条項があったとしても、それに気づく人はほぼいないはずです。ましてや契約内容について交渉する知識・能力のある人は決して多くないでしょう。
 消費活動が多様化・複雑化した現代社会において、私たちは誰がどこで作ったか分からないものを購入したり契約したりしています。それなのに、知らなかったあなた(消費者)が悪いんでしょ、という論理はあまりに不合理ですよね。そこで「消費者法」が、事業者と消費者の様々な格差を是正し、消費者を保護しているわけです。さらに、消費者法の遵守によって公正な市場競争が行われることは、健全な経済発展の土壌になります。日本企業がグローバル競争で打ち勝っていくためにも重要な役割を果たしているのです。

私たちの消費活動が変われば、法律も変わるんですか?

 変化・進展を続ける現代社会において、消費者問題というのは日々新たに生まれているといっても過言ではありません。それに対応して、消費者法も毎年のように改正や新規立法がなされています。
 とはいえ例えば、近年若者が被害にあっている荷受け代行アルバイトの問題や、ネットオークションでの事業者と消費者間のトラブルなどは、現時点で法の整備は追いついていません。消費者法とは、社会の現状に合わせて常に新しい課題へチャレンジを続けている分野ともいえるのです。

ゼミでは、過去の判例をじっくり読み込むそうですね。

 私のゼミでは、化粧品を使ってかゆみや痛みが出たという"化粧品訴訟"、欠陥のあるテレビが火災を引き起こしたという"カラーテレビ発火訴訟"といった過去の消費者被害に関する重要な判決を読み解いていきます。
 様々な消費者被害に対し、これまでどのような法の整備・運用がなされてきたかを学ぶことは、現行法の課題を明らかにし、今後のあるべき姿を考える土台にもなります。ゼミの卒業生の中には、大学での学びを活かして、消費者庁で働いたり弁護士として活躍したりしている人もいて、嬉しい限りです。

大学生活のアドバイスをお願いします。

 大学生って、学びの"特権階級"だと思うんです。社会人になったらなかなか会えない人物や足を踏み入れることのできない場所が、学生だからと門戸を開いてくれることは多々あります。消費者庁で専門家のレクチャーを受けたり、企業のインターンシップに参加したりできるチャンスもあります。そういう恵まれた機会を最大限活かして、大学時代だからこそできる勉強に打ち込んでほしいと思います。
 そして、仲間内の狭い輪の中に閉じこもらないでほしいのです。スマホの画面を見つめていても、世の中のことは分かりません。新聞やテレビでニュースに触れる、本を読む、映画を観る。どんなことからでも構いません。いま社会で起こっていることを広い視野で見つめ、考え、そして自分は今後どう生きていきたいのかを模索する4年間にしてほしいと願っています。

※掲載されている教員の所属学部・職位及び研究テーマ等は、取材当時のものです。