一言で「税務会計」を説明するなら、"守り"の会計です。どんな会社も目指しているのは利益を最大化することです。正確には、税引き後の純利益を最大化すること。そのために、必要以上に税金を払いすぎることなく適正な額の税金を納める、いわば"会社を守る"ために行う会計なのです。対して、株主へ報告するための「財務会計」は、会社をより大きくすることを目指す、"攻め"の会計といえます。
ちなみに、会計は難しそうと敬遠する人もいますが、コスト概念を身につければ、自らの裁量で判断できる範囲はぐっと広がります。営業、販促、開発とどんな業種でも社会人には必須の能力であり、経営者になるための重要な資質ともいえるでしょう。
教科書を輪読して基礎知識を身につけた後は、約半年かけてグループ研究をしています。学生たちは皆、驚くほど斬新なテーマを考えてきますよ。2016年度も、世代間所得格差を是正するために贈与税の税率を年齢によって変えることを提案した「世代をつなぐ贈与税 〜眠れるタンス預金を解放せよ」や、消費額に応じた税率で消費税を徴収して逆進性を解消しようという「消費税と所得税 最強カードとマイナンバーが作る新たな税世界」など、質の高い論文が仕上がりました。ほかにも、いま話題のカジノ問題や、容姿の良し悪しが人生に与える影響など、自分なりの問題意識で社会の様々な問題に切り込み、期待以上の成果を上げてくれました。
総勢30人ほどのゼミ生は、幅広いテーマの研究に挑む「研究班」と、税理士や国家公務員などの資格試験合格を目指す「資格班」に分かれています。それぞれの高いモチベーションは互いにいい刺激を与えているようで、2年は研究に集中し3年から簿記の勉強を始めた学生や、資格取得後に研究に励む学生もいます。
資格試験の勉強なら、大学より専門学校の方がいいのではと思う人もいるかもしれません。でも、勝負は資格を取得した後。社会に出れば、世界情勢をはじめとする教養やコミュニケーション力、そしてもちろん、物事を調べ分析し考える力が不可欠です。大学での学びと並行して「会計プロフェッショナルプログラム(※)」で資格の勉強に励めば、その後の大きな成長につながると確信しています。
(※)公認会計士、税理士、国税専門官、日商簿記1級を目指す学生のためのプログラム。選考試験を経た各年度50人が対象。提携専門学校の受講料は全額大学負担。
社会人になったら、締め切りのない仕事というものはありません。ゼミ活動に置き換えるならそれは、決められた期日までに必要な準備や報告が出来るということ。ですから私のゼミでは、時間通りに終えることが原則です。そのために大切なのが、周到な事前準備。サイボウズを活用してプレゼン資料をチェックし、ブラッシュアップして発表に臨めるよう指導しています。中身の濃い議論や質疑応答ができますし、ダラダラと延長することもないので、サークルやアルバイトとも両立できます。
僕が学生に望んでいることはシンプルで、「幸せな人生を送ってほしい」ということ。そのために、自分はどういう生き方をしたいのか、そのために大学では何をすべきか、ということを考えて、大学生活を有意義に過ごしてほしいと願っています。
※掲載されている教員・学生の所属学部・職位・学年及び研究テーマ等は、取材当時のものです。