キャリア=就活のこと、と誤解する人がいますが、それは少し違います。「キャリア」の語源は「轍(わだち)」。車輪の跡、つまりこれまで歩んできた人生の軌跡です。その道のりを時折振り返って、悩み考え、そして将来を展望するーー。これがキャリアをデザインするということです。
といっても、簡単なことではありませんよね。いまは、5年先、10年先の社会情勢も読めない激動の時代。かつてのように大手企業に入れば安泰ということはありえません。また、育った環境や出会った人の影響を受けて、無意識のうちに選択肢を狭めてしまっていることもあるかもしれません。では、どうするか。大切なのは、学ぶことで世の中を知り、自らを知り、自分の居場所を作る、すなわち「自分の人生を主体的に切り開いていく姿勢」を持ち続けることではないでしょうか。
自分の夢ややりたいことが見つからない人って、実は大勢います。それで就職活動前に焦って自己分析をする......あれってちょっと暗い気持ちになりません? 僕はあまりお勧めしません(笑)。
自分の内面を見るよりも、まずすべきは「社会を知ること」「教養を身につけること」です。例えば、本が好きな人は、出版取次の仕組みやその経済効果を学べば、出版業界を好転させる新たな可能性に気づくかもしれません。また、地元愛が強い人なら、外から地域経済を活性化する術を知ることで、仕事の選択の幅が広がるでしょう。"自分"ではなく"社会"に目を向ける、そのことが結果として、自分の夢や方向性を見つけることにつながるのです。しかも、知らなかった新たな世界に出会うという、大きな喜びを感じながらね。
1年次に、経済・経営・コミュニケーション・現代法の4学部の入門科目を幅広く学び、2年次から所属学部を選択するという新しい学びのスタイルです。大きな特長は、4年間を通じて少人数のワークショップ形式で就業力を身につけていくこと。2年次以降は学部横断履修も可能なので、例えば「グローバルビジネス」というテーマなら、経済学部で「国際貿易論」、経営学部で「グローバル・マーケティング論」といったように、学部を越えた体系的な学びも深められます。
2017年春に第1期生50名を迎えましたが、みんな意欲にあふれた学生ばかりです。授業を主体的に作っていく意識が高く、我々教員が指示をしなくても事前にテーブルや椅子、ホワイトボードまで用意してくれているほど。議論が白熱して時間が足りなくなることもしばしばです。まだ始動したばかりですが、東経大が誇る教育プログラムの一つになると確信しています。
15~17名の少人数で行う「キャリアデザイン・ワークショップ」は、自らのキャリアを考えること、課題解決能力を高めること、仕事への理解を深めること等を目的としたものです。経営学やキャリア心理学といった様々な分野の教員がテーマを設定し、毎回4人1組ほどのグループに分かれて議論し、答えを導き出し、プレゼンする。それを繰り返すことで、物事をロジカルに考える力、異なる意見・価値観を受け入れる力、自分の主張を他者に伝える力、情報の集め方などを養っていきます。
このワークショップに、用意された正解はありません。それは、就職活動でも社会人人生でも同じこと。正解のない世界で力を発揮するための力を、日々のワークショップで鍛えているのです。
大学では、「何を学ぶか」以上に「どう学ぶか」が重要です。どんな先生から、どんな環境で、どんな先輩と一緒に学べるのか、オープンキャンパスなどでしっかり見極めてください。
それから大学という場は、授業以外にも学びのチャンスがあふれています。例えば東経大の「グローバルラウンジ コトパティオ」という学習スペース。ここに来れば、いつでも好きな時にネイティブスピーカーと喋れます。通じなかったら大いにショックを受けなさい(笑)。隣の「学習センター」に行けば、日本人のアドバイザーが丁寧な指導をしてくれるはず。そうやって英語力を磨き、留学した学生は大勢います。
僕自身のことを振り返っても、人生を節目節目で変えてくれたのは「学び」の力でした。皆さんも、社会に巣立つ前の大きな節目の時代に、良き学びに出会い、豊かな人生を歩んでいってほしいと思います。
※掲載されている教員・学生の所属学部・職位・学年及び研究テーマ等は、取材当時のものです。