小木ゼミでは、2年次から個人研究、いわば"プレ卒論"に取り組み、3年次にはほぼ卒論に仕上げます。テーマは、「生活習慣病者削減に向けた特定保健指導の活用」「事業所内保育の活用による少子化問題の緩和」「国産スマートフォンの顧客シェア獲得」「日本の温暖化抑制」など実に様々です。
大切にしているのは、まずは物事に取り組む際の「姿勢」、そして自らの気づきや関心から問題意識を持つこと、さらにはそれを的確に掘り下げていくこと。言い換えれば、「批判的精神」をいかに身に付けていくかということです。
例えば、以前「アルバイト先のカフェで、混んでいると立ち去ってしまうお客さんが一定数いる」と気づき興味を持ったゼミ生がいました。彼女は、実際のデータを取るために2カ月間、毎日店頭に立って「売り逃し」をしたであろう客数をカウントし、本来得られたはずの売上額を算出。回転率を上げるためにスタッフを増員すべきか等を検証し、論文にまとめました。まさに自分の足を使って稼いだ、学生ならではの面白い研究でしたね。
いま進めているプロジェクトは三つあります。一つ目は、イーグル製菓・鈴木栄光堂とのコラボによるお菓子の商品開発。実際にスーパーやコンビニなどで発売された商品もあります。二つ目は、国分寺の魅力を紹介するウェブサイト「国分寺物語」の企画・制作。昨年はテレビ番組での国分寺市長との対談も実現しました。そして三つ目が、国際貢献プロジェクト「TFT」(Table For Two)への参加です。これは、「先進国での肥満・生活習慣病」と「開発途上国への食料支援」という課題を同時に解決しようという取り組み。授業で紹介したところ、当時のゼミ生が「東経大でもやりたい」と言い出し、自ら生協や大学と交渉。カロリー計算された健康的なランチに寄付金を上乗せした「TFTメニュー」を学食で提供するようになりました。いまも、後輩たちがメニューや告知方法に工夫を凝らしつつ活動を盛り上げています。
個人研究の発表時は、それこそ集中砲火のようにバシバシとツッコミが入ります。その厳しさたるや、私が良い点や可能性を褒めるフォロー役に回らなければいけないほど(笑)。毎週これだけ真剣に取り組んでいるので、当然プレゼンスキルやディスカッションスキルは上がりますし、互いの研究発表を聞くことで知見も広がります。
そして、「学び」と同じくらい「遊び」にも本気なのが、小木ゼミです。夏合宿での出し物や料理コンテスト、クリスマス会や卒業イベントなど、盛りだくさん。約45名のゼミ生のうち女子学生が2/3以上を占めており、非常に賑やかかつ華やかです。OB・OG会も活発で、毎年100人ほどが集まります。ゼミの伝統が受け継がれ、その輪が広がっていく様子を見られるのは、教員冥利につきますね。
当然の事ながら、学生生活で真剣に打ち込んだものがない人は、就職活動時に語れるものはありません。小木ゼミでは、3年の終わりまでに個人研究を卒論に仕上げ──もちろんプレゼンスキルやディスカッションスキルも向上させ──コラボ企画にも注力しています。積み上げてきたこれらの成果をきちんと伝えることができれば、必ず良い結果が出ると自負しています。また、各ゼミ生(2年~4年生の約45名)のカルテを作成し、個人面談を行う中で、各人に合った指導を徹底的に行っていることも成功の秘訣かもしれません。
ただ実は、私がゼミで一番厳しく指導するのは、研究成果の良し悪しではありません。それよりも、段取りがうまくできていないとか、合宿先でスリッパが散らかっているとか、イベントの準備の際に後輩が動かないなどといった、人としての振る舞いや気遣いという点では相当厳しく注意します。つまりは、何事に対しても、取り組む際の「姿勢」を厳しく指導するわけです。
そうやって築かれたマニュアル化できないトータルな人間力こそが、社会で求められる「就職力」ではないでしょうか。おかげさまで、小木ゼミからは東経大初の某大手企業の内定者や大学研究者も出るなど、輝かしい成果を上げています。スポーツと同じように勉強も、とことん本気で取り組んだ後の爽やかな達成感は格別なもの。皆さんにとって、その一つがゼミ活動であればとても嬉しいですね。
※掲載されている教員・学生の所属学部・職位・学年及び研究テーマ等は、取材当時のものです。