法学というと"分厚い六法全書を暗記するのかな"と思う人もいるかもしれません。あるいは、法律は"古めかしいもの"といったイメージを持っている人もいるでしょうか。
そうではありません。法律は社会のなかで常に機能しているものであり、法学とは、そんな法律を事実と照らし合わせて解釈し、「どのような法律上の問題があるか」「どのような対応が可能か、必要か」などを考え、世の中の問題の解決を図るための学問なのです。
なかでも東経大の現代法学部では、"現代"という名の通り、ビジネスや行政そして各人が直面している課題――環境、福祉、消費者問題など――から、法学の基礎や法的なものの見方を学んでいきます。
今年度のテーマは「環境問題における地方自治の役割と法」です。前期は、判例や論文の読み方を習得し、環境問題への理解を深めます。いま取り組んでいるのは「アスベスト問題」。判例やそれに関する論文を読み、なぜその結論に至ったのか、結論の妥当性はあるかなどを考えます。後期はグループ研究を行い、12月のゼミ報告会で成果を発表。さらに1年の集大成として1万字の論文を執筆します。やることが盛りだくさんで決してラクではないと思いますが、ゼミ生たちは皆、驚くほど力をつけていますよ。
人の話を聞き、現場を見て、自分の頭で物事を考え、判断を下すこと――。それは学部を問わず、社会で生きていくために不可欠な能力だと思っています。ゼミ合宿などで現場を訪れ、当事者と会うことを重視しているのはそのためです。これまでに、東日本大震災の被災地、水俣病の現場、自然保護が課題となっている屋久島や釧路湿原、循環型社会を目指す長野県大町など、あちらこちらへ出かけて学びを深めてきました。
ゼミの冒頭に毎週、全員が一つのテーマについて2分間のスピーチをします。スピーチのお題は「好きな言葉」から「アスベスト問題に思うこと」まで様々。やってみると分かると思いますが、2分間、一人で話をするって意外に大変なんですよ(笑)。ゼミ生同士が互いをより深く知る機会になりますし、プレゼンテーション能力を養う良い訓練になっていると思います。
法の分野において「何が事実か」「何を要件事実(一定の法律効果が発生するために必要な具体的事実)として捉えるか」、は非常に重要なポイントです。それを誤ると、冤罪を生んでしまったり、権利があっても裁判上認められないこともあるわけですから。この「事実を的確に理解し判断する力」「論理的に結論を導き出す思考力」は、弁護士や裁判官といった法曹界の人材に限らず、企業人や公務員にも必ず求められる能力だと思います。また、コンプライアンス(法の遵守)が重視される時代ですから、法律の観点から問題を捉えて解決方法を提案する力は、どんな分野に進んでも役立つことでしょう。
※掲載されている教員・学生の所属学部・職位・学年及び研究テーマ等は、取材当時のものです。