東京経済大学

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2018年度 第48回
経済学部 李 蓮花 准教授

社会保障という付き人がいると人生は、少しだけ心強くなる。経済学部 李 蓮花 准教授 社会保障という付き人がいると人生は、少しだけ心強くなる。経済学部 李 蓮花 准教授

LI Lianhua
東京経済大学 経済学部准教授
北京大学経済学院経済学科卒業。早稲田大学アジア太平洋研究科国際関係学専攻 修士課程・博士課程(後期)修了。滋賀大学、静岡大学を経て現職。主な研究分野は、社会保障、社会政策の国際比較。著書は『東アジアにおける後発近代化と社会政策』(単著)『社会保障の国際比較研究』(共著)ほか。

社会保障について学ぶ機会って、あまりなかった気がします。

 身体の具合が悪い時は病院へ行きその医療費は一部を負担するだけで良いこと、働き始めたら雇用保険に入り万が一失業した場合であっても給付が受けられること、子どもが生まれても保育所に預けて安心して就労できること、といったように、社会保障は私たちの生活を守り支える非常に身近なものです。にもかかわらず、日本では高校までの間に社会保障について体系的に学ぶ機会はごくわずかです。そのため、制度の意義や仕組みを知らないまま「年金は損」といったいい加減な情報を鵜呑みにしてしまう人も少なくありません。
 李ゼミでは、社会的に話題になっているテーマを用いて、社会保障の何たるかを学んでいきます。今年度は、社会経済的地位によって生じる「健康格差」や、AI時代の「ベーシックインカム」などを取り上げました。社会保障について考えることは、自分や家族の人生を、そして今後の社会のあり方を考えることなのだと知ってほしいと思います。

合同ディベート大会に参加するそうですね。

 毎年12月に、社会保障や福祉について学ぶ学内の3つのゼミが集うディベート大会に参加しています。今年度のテーマは「民間企業における女性管理職のクオータ制導入の是非」、そして「障がい者の雇用」「外国人住民との共生」「児童養護施設出身者の自立支援」に関する政策提言について。何をどのように調べ理論武装するかは、すべて学生次第です。外国人住民が多い埼玉・川口市にフィールドワークに行ったり、障がい者との関わりについて大学生の意識調査をしてみたりと、いま各チームが試行錯誤しています。当日は6時間にも及ぶ白熱した舌戦が繰り広げられます。正しいと思っていた意見をコテンパンにされたり、辛辣な評価を受けたりしたとしても、それもまた貴重な経験(笑)。当日、ゼミ生たちがどんな頑張りを見せてくれるか楽しみです。

中国・大連で研修をした狙いを教えてください。

 海外に出たことがない学生も多いので、短期間でも異文化体験をしてもらうべく、中国・大連で5日間の海外ゼミ研修を行いました。研修内容は、現地企業や日本企業の訪問、高齢者福祉施設の見学、日本語学科で学ぶ大学生との交流など盛りだくさん。渡航前は不安そうだったゼミ生たちも、1日もすればすぐに慣れて、特に現地学生とはオフの日に一緒に出かけるほど仲良しに。「次は留学でまた来たい」「中国の学生は学ぶモチベーションが高い」「大連はあらゆる場所でキャッシュレス化が進んでいて驚いた」など、それぞれに刺激を受けたようです。

日本の社会保障制度の現状を、どう見ますか。

 どうしても課題ばかりに目が行きがちですが、日本の社会保障制度には優れた点が多々あります。例えば、医療保障の公平性は世界トップクラス。一定の質の医療がほぼすべての人に提供されるというのは、世界に誇れる素晴らしいことなのです。少子化対策も少しずつですが着実に進んでおり、2005年以降、経済状況も相まって出生率は回復しつつあります。そして、いま各国が最も注目しているのが日本の高齢者福祉です。介護保険がカバーする多様なサービスをはじめ、住み慣れた地域で暮らし続けるための地域包括ケアシステムなど、高齢先進国として他国の模範になるような仕組みはたくさんあるのです。一方で、遅れているのが貧困対策。特に母子家庭の貧困率の高さは先進国の中でも突出しており、早急な対策が必要です。

人口減少と少子高齢化が加速する日本は、今後どうすべき?

 日本の社会保障制度を持続させていくためのカギは、「働き方の柔軟性」にあるのではないかなと思います。私たちの人生には色々な出来事──子どもが生まれる、親の介護が必要、家族が入院した等──があります。そんなとき、例えば「週3日出勤する」「1日4時間だけ働く」といった柔軟な働き方が可能なら、労働者=社会の支え手を確保できます。女性はもちろん、高齢者や障がい者、外国人も含めた多様な人材が柔軟に働き、そして相応の対価を受け取れるよう、労働者の意識も企業行動も変わるべきなのです。
 そんなこと実際には難しいのでは、と思っていませんか?実はそのような社会改革を実際に行った国もあります。例えばオランダでは、パートタイムとフルタイムの労働者の待遇を均等化し、労働時間の選択の自由度を高めたことにより、わずか20年の間に女性の就業率を飛躍的に高めることに成功しました。社会は、変えられるのです。
 若い世代の皆さんには、世の中の事象にもっと関心を持ってほしいですね。まずはスマホのニュースからでOK。社会でいま何が起きているかを知り、その背景を考える習慣をつけてほしいと思います。

Students'VOICE李ゼミで学ぶ学生の声

西川優樹さん(経済学部3年)
ディベート大会に向けて、女性管理職のクオータ制について調べています。僕らのチームは反対の立場なので「男性への逆差別では」「能力に見合わない人材登用は企業の競争力低下につながる」などの主張をするつもり。李ゼミに入ってから、これまで見なかった海外のニュースなども気になるようになってきました。将来は公務員として住民の生活を支えるのが夢。公務員試験の勉強とゼミ活動を並行して頑張っています。
河野初音さん(経済学部2年)
李先生のほがらかでお茶目なお人柄同様、ゼミの雰囲気もとても和やかです。先生との距離感や、言いたいことを言い合える仲間との関係性は、ゼミならではのものだなと感じます。社会保障という分野は、経済学のみならず、政治学や社会学なども絡んでおり、多角的にものを考えることができます。まだやりたいことが定まっていないという人も、きっと興味のあることに出会えるはずです。

※掲載されている教員・学生の所属学部・職位・学年及び研究テーマ等は、取材当時のものです。

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