東京経済大学

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2019年度 第50回
コミュニケーション学部 小林 誠 准教授

そもそも想定外だから異文化。異なる「ものの見方」を知ろう。コミュニケーション学部 小林 誠 准教授 そもそも想定外だから異文化。異なる「ものの見方」を知ろう。コミュニケーション学部 小林 誠 准教授

KOBAYASHI Makoto
東京経済大学 コミュニケーション学部准教授
東京外国語大学外国語学部(東アジア課程モンゴル語専攻)卒業。東京都立大学大学院社会科学研究科 社会人類学専攻 修士課程修了。首都大学東京大学院人文科学研究科 社会行動学専攻 博士後期課程単位取得満期退学。主な研究分野は、文化人類学。著書に『探求の民族誌――ポリネシア・ツバルの神話と首長制の「真実」をめぐって』(単著)『アイランドスケープ・ヒストリーズ――島景観が架橋する歴史生態学と歴史人類学』(共著)『マスメディアとフィールドワーカー』(共著)『景観人類学――身体・政治・マテリアリティ』(共著)。

「文化人類学」というと、「未開の地」を行くようなイメージがあります。

 平たくいえば、「人間ってすごく多様だよね」ということから始まる学問です。現場に行ってフィールドワークをし、その場で見聞きしたことを通して、異文化の「ものの見方」を明らかにしていくのです。ただし異文化とは、そもそも自分たちの常識の外にあるもの。思い通りに進まないことも日常茶飯事ですが、それがまた面白く、この学問の醍醐味でもあります。
 例えば、10年ほど前、南太平洋の島国ツバルで2年間のフィールドワークを行った時のこと。海面上昇により"沈みゆく島"について住人の考えを知りたかったのですが、当時の彼らにとって気候変動は身近な問題ではなく、宗教上の理由から信じていない人も多かったのです。やむなく調査は中断。手当たり次第に色々な話を聞いていくなかで、出会ったのが「首長制」でした。ツバルの首長は、国会議員などとは別格の伝統的に重要な存在であり、島の男性たちにとっては関心の的。しかも、マナという超自然的な力を備えた人物が首長になると、"島の天候や自然環境に恵みをもたらす"と信じられていることが分かりました。想定通りではなかったものの、自然に対するツバルの人々の「見方」の一端に触れることのできた貴重な経験でした。

フィールドワークに2年もかかるんですか!?

 文化人類学の世界では、2年間のフィールドワークを経て一人前、という不文律があるんです(笑)。それはともかく、たしかにそれなりの時間をかけないと成果を得られないという部分はありますね。ツバルでも、まず私の名前と顔を覚えてもらい、どういう人間かを知ってもらうところから始めました。もちろんツバル語も必死に勉強しました。
 長らく現地に身を置くと、わざわざ人に話すまでもない(と相手が思っている)日常の営みや価値観にふと出会えたり、それまでの概念が覆るような発見があったりするものです。その瞬間が本当に面白い。時には、いつの間にか相手の価値観に巻き込まれていることもあります。例えば当時の僕は、一日中ココナツ集めをしたり、祭りの日にお祝いの料理を作って持ち寄ったりという共同作業に、当たり前のように参加していました。「誰もがコミュニティのために貢献する」という島の価値観に知らず知らずのうちに染まっていたようです(笑)。そういった経験は、自国や自分のアイデンティティをあらためて問い直すことにもつながります。

古着にベジタリアン、観光と、学生のテーマは幅広いですね。

 異文化研究といっても、対象は海外に限りません。自分とは異なるものの見方を知るという観点から、「ベジタリアン」「古着文化」「外国人観光客」「国際結婚」など、学生たちはそれぞれ関心のある多様なテーマに取り組んでいます。フィールドワークでは、ベジタリアンの会合に参加させてもらったり、国分寺の古着屋で取材をしたり、浅草で外国人観光客にインタビューしたりと、各自が工夫していますね。
 自分は何に興味があるんだろう? 現場で何を見聞きすればいい? 問題意識を持つってどういうこと? 人に読んでもらえる報告書とは? と、学生はそれぞれの局面で苦労していますが、それでも「とりあえずやってごらん!」と放り出せば、皆ちゃんと結果を出してくれるものですよ(笑)。

人間の多様性を知ることは、どうプラスになりますか。

 ざっくり言えば、「優しく」「楽しく」生きていけるということでしょうか。文化人類学を通して色々な人のものの見方を知ることは、年齢、性別、国籍、家族のかたちといった様々な多様性を受け入れ、相手の目線に立って考えるということ。それは相手を想う優しさにつながります。
 それともう一つ。皆さんの考える"当たり前"はこの世のすべてではありません。例えば、金銭的に貧しくても、時間にルーズでも、会社という存在がなくても、うまく生きていける社会は世界にたくさんあります。自分の置かれた状況を広い視野で捉えることができたなら、もっと心が軽く、楽しく、生きられる気がしませんか? それに、どこでもどんな状況でも僕らには学び取るべきことがあって、その学びは喜びと楽しさに満ちあふれているのだと、一人でも多くの学生に気づいてほしいと願っています。

Students'VOICE小林ゼミで学ぶ学生の声

堀チュク千郁佳さん(コミュニケーション学部3年)
バイト先のコンビニで出会う外国の友人たちの存在をきっかけに、外国人労働者のあり方について問題意識を持つようになりました。人手不足を外国人が補っているという実態と、日本で進められつつある働き方改革、そして技能実習生たちが置かれている状況──。様々な問題をどうまとめ上げていくか、いまはまだ模索中。今後もずっと向き合い続けていくつもりです。
藤原大河さん(コミュニケーション学部3年)
夏のゼミ合宿はフィリピン・セブ島へ行きました。渡航前は南国リゾートのイメージしかありませんでしたが、実際に行ってみると、立派な空港や高層ビルの隣でホームレスが寝ていたり、幼い子供がボロボロの格好で働いていたりと、ショッキングな光景も目の当たりにしました。日本の暮らしやすさ、大学で学ぶことのできる有難さを、外から日本を見てあらためて実感しました。
岡 正子さん(コミュニケーション学部3年)
小林先生の授業で人柄に惹かれ、迷わずこのゼミに入りました。3年次に取り組んだのは、近年流行している「サラダ文化」について。インスタグラムなどに投稿する層と、実際にサラダ専門店などを利用する層では、年齢の差があることも分かり興味深かったです。小林ゼミで鍛えられるのは、自主性。自分で考え自分で行動しないと何も進みません。先生の親身なアドバイスには何度も助けられました。

※掲載されている教員・学生の所属学部・職位・学年及び研究テーマ等は、取材当時のものです。

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