東京経済大学

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2019年度 第56回
現代法学部 山本 紗知 准教授

新しい生活領域は新しい行政法が支えます。現代法学部 山本 紗知 准教授 新しい生活領域は新しい行政法が支えます。現代法学部 山本 紗知 准教授

YAMAMOTO Sachi
東京経済大学 現代法学部准教授
一橋大学大学院法学研究科 修士課程修了。一橋大学大学院法学研究科 博士後期課程修了。静岡文化芸術大学文化政策学部専任講師を経て、2019年4月から現職。主な研究分野は公法学。主な担当科目は、行政救済法、環境問題と法。近年の論文に「送電網整備法制における自然保護:ドイツ計画法の議論を素材として」など。

法律の大部分が「行政法」って本当ですか?

 行政法の守備範囲は非常に広く、私たちの生活のあらゆる場面に関わっています。例えば、安心して外食ができるのは「食品衛生法」に基づく営業許可制度によってレストランの衛生状態などがチェックされているからです。安全かつ円滑な道路交通が確保されているのは「道路交通法」のおかげ。ゴミ収集・処理には「廃棄物処理法」が、上下水道のサービスには「水道法」「下水道法」がそれぞれ関わっています。ほかにも、貴重な自然や都市・農村の良好な景観は「自然公園法」「景観法」などによって保護されています。
 私たちの生活は、安全・安心の確保から各種サービスの提供まで、国や自治体によるさまざまな活動によって取り巻かれていますが、社会・公共の利益の実現を目的とするこうした行政活動を支える法律を総称して「行政法」というのです。また同時に、行政法には、行政がその権力を濫用して私たちの権利を侵害することのないよう"行政をコントロールする"という重要な側面もあります。社会にトラブルが起きた際、民事裁判や刑事裁判をつうじて、損害賠償の請求や加害者の処罰というかたちで事後的な解決を図ることも必要ではありますが、行政法は、先ほどの許可制度のような仕組みによって、被害の発生前に紛争を予防しようとするところにひとつの特徴があります。
 ちなみに、およそ2000ある現行法律の大部分は行政法が占めるといわれています。「行政」の定義は難しく、国家の活動から立法と司法を引いたもの、といわれることもあるほど多種多様な活動が含まれることからすれば、必然といえるかもしれません。そんなにたくさんの法律を覚えられない、と思うかもしれませんが心配は無用。授業では、個々の法律と向き合いつつ、それらの根底にあるものの考え方や共通する法理論を学んでいきます。

行政法は"社会の最前線"の学問だとか?

 遺伝子組み換え、ドローン、AIによる自動運転など、現代社会では革新的な新技術が次々と生み出されていますね。技術の発展を妨げることなく、社会の安全・安心を守ることのできる法の整備は喫緊の課題です。また今日は、テロ対策、原発、地球温暖化など、これまで経験したことのない複雑かつ不確実なリスクも山積しています。さらに、個人情報の保護、景観の保全、終末期医療のあり方、障がい者の自立支援など、社会が成熟するにつれて人々のニーズも多様化していきます。
 このように、複雑化・高度化する現代社会において、その安全・安心を守る行政法の重要性はより一層高まっています。個人や企業の自由な活動を守るとともに、人々が安心して暮らせる社会を実現するためには、どのようなルールが必要なのか。法全体の統一性・整合性や法的安定性を確保しつつ、社会の潮流や移り変わるニーズを的確に反映し、その法規制が適切であるかを問い直し続ける──。行政法は、まさに社会の最前線に位置するダイナミックな学問といえるでしょう。

ゼミでの学びは、将来どのように役立ちますか。

 ゼミでは、行政法の基本的な知識を適宜復習しながら、判例研究に取り組んでいます。いわゆる重要判例──校庭開放中に起きたテニス審判台の転倒事故に対する行政の賠償責任が問われた事案や、君が代斉唱をしない教職員に対する懲戒処分について争われた事案などをこれまで扱いました──を中心に検討していますが、最初は裁判例の全文を読み解くだけで、皆ひと苦労。ゼミでは、争点の理解に努めるなかで、なぜその結論に至ったのか、結論は妥当か、他の事例にも当てはまるかなどを議論していきます。
 これらの活動を通して身につけてほしいのは、合理的な結論を導くための「バランス感覚」です。誰も経験したことがない新たな問題に直面したとしても、相反するさまざまな利益を的確に把握し、その利害を調整し、解決への道を探る。こういった考え方や問題解決力は、法曹界のみならず、ビジネスパーソンとして一般企業で働く際にも、生活者の立場であっても、きっと役立つと思います。

先生が研究者を志したきっかけは、ドイツ留学だそうですね。

 私はもともとドイツの歴史や文化が好きで、大学ではドイツ語を極めようと思っていました。大学2年時にはドレスデンというドイツの街へ語学留学をし、この国にさらに愛着がわきました。ちょうどその頃に読んだ論文が、東西ドイツ統一後の急激なインフラ整備により旧東西国境地帯に残された貴重な生態系が危機にさらされているというもの。ドイツへの興味がきっかけとなって、環境保護や経済発展などの諸要請の調整について関心が広がり、それがいまの研究にもつながっています。
 皆さんも、何が将来の道を開くきっかけになるか分かりません。そして、失敗も軌道修正も許されるのが大学時代です。やってみたい、知りたい、行ってみたいという好奇心に任せて、自分の好きなモノ・コトを存分に追究してみてください。

Students'VOICE山本ゼミで学ぶ学生の声

山﨑麻友美さん(現代法学部3年)
私は裁判所での仕事に興味があるので、多様な側面から行政法を学べるこのゼミに入りました。山本先生は、基本的なことや素朴な疑問にも丁寧に答えてくださるほか、一つの問題に対して複数の判例を示しながら「物事には色々な見方がある」と教えてくださいます。先生の人柄そのままの、和やかな雰囲気のゼミです。
小林光城さん(現代法学部3年)
判例研究は毎回すごく難しく、挑みがいがあります。先日は「校庭開放中の事故」に対する行政の責任に関する判例を取り扱いました。最高裁の判決は、「損害賠償責任を負わない」というものでしたが、ゼミ内でも意見は二分しました。一人ひとりがしっかりと考えを持っていて、それを言い合えるゼミだと思います。
松澤一輝さん(現代法学部3年)
山本ゼミには、イチ押しの本を皆に紹介する「ブックレビュー」という時間があります。最近は読書から遠ざかっていたのでいい機会になっています。大学では、多様なバックグラウンドの人と関わること、そしてそこから生まれることを大切にしてほしい。僕もゼミのほか、友人と新たに作った弓道サークルで活動中です!

※掲載されている教員・学生の所属学部・職位・学年及び研究テーマ等は、取材当時のものです。

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