それまでの世の中になかった製品やサービス、新しい技術のことです。例えば、ノーベル賞受賞で話題になった青色発光ダイオード(LED)やiPS細胞などですね。いまや私たちにとって当たり前のインスタントラーメンやインタ―ネットだって、世に出た当時は「イノベーション」だったのです。
日本では長年、研究機関や企業の体制、資金調達の難しさなどから、「イノベーションが起こりにくい」とされてきました。しかし、人口が減少し高齢化も進んだ今日、新たな製品・サービスによって需要を創出することが経済成長には不可欠といえます。
経済学は、ものを生み出す側(供給)と買う側(需要)の関係を解き明かす学問です。「社会にとって有益な取引が行われるために、どんな仕組みが必要か」についても考えます。
例えば「特許」制度。特許には、研究開発のインセンティブを高める、事業化に向けた取引がスムーズになる等のメリットがあります。一方で、特許が強すぎると、費用が高くなり利用されない、独占状態になって競争が起こらない等のデメリットも大きくなります。様々な事象が複雑に絡みあう実社会において「最もイノベーションが起こりやすい仕組み」を考えるのは大変難しく、専門家の間でも答えは出ていません。
そうですね。例えば今年、トヨタが「燃料電池車」の特許を無償で公開して話題になりました。せっかくの研究開発の結晶を、トヨタはなぜ無償公開したのか? 実はこれも経済学的に合理性のある戦略なのです。特許開放によって燃料電池車を生産する企業が増えれば、量産やさらなる技術革新によって、市場全体の活性化が期待できます。すると水素ステーション(燃料の水素を供給する施設)も増えて利便性が高まり、一層の普及が進むでしょう。つまりトヨタは、特許開放が結果として自社に有利であると判断したのでしょう。
経済学はよく「取っ付きにくそう」と言われますが、経済学的なものの見方ができると、世の中の仕組みや展望をより深く理解できるようになります。将来どんな仕事をするうえでも強みになりますよ。
春学期に、事例研究を中心としたテキストの輪読を行います。このとき最も力を入れているのが、学生同士の質疑応答。担当者は、事前に様々な事例やデータを調べ、自ら考え、どんな質問にも対応できるよう準備しておくのです。最初は気後れしていた学生たちも、今では実に堂々と受け答えしていますよ。秋学期は、2・3年生16人が4グループに分かれてレポートを作成します。
大学4年間は、自分に対する投資の期間です。「ものを考える力」「発信する力」は、一生の財産になるスキルですから、ぜひ一生懸命みがいてください。とくにゼミは、自分の頭で納得するまで考え理解する、そしてその達成感を感じられる有意義な場です。面白い学びとの出会いを、楽しみにしていてください。
※掲載されている教員・学生の所属学部・職位・学年及び研究テーマ等は、取材当時のものです。