マーケティング学や経営学の分野で陥りがちなのが、理論を学んで分かった(気がする)けれど、実社会では活用できない、という事態です。より深く理論を理解するために、そして、ビジネスシーンで役立つ実践力や応用力を身につけるために、何より効果的なのは"現場を知る"ことです。そこで本藤ゼミでは、私の前職のコンサルタントやシンクタンク時代の人脈を生かして、企業との様々な企画に取り組んでいるのです。これまでに、大塚製薬、森下仁丹、国分、大正製薬をはじめ多くの企業にご協力いただき、製品や売り場のプロモーション企画を提案してきました。
今年度は、オムロンヘルスケアと共に、電動歯ブラシ「メディクリーン」の店頭プロモーション企画の立案に取り組みました(2015年7月に終了し、現在ユニ・チャームとのプロジェクトが進行中)。分析に利用するデータの一つが、全国のドラッグストアの買い物客約1,200万人の「ID-POSデータ(※)」。いま大手企業も注目しているこのビッグデータをもとに、現状分析・問題点の抽出・仮説構築を行い、最終的には4チーム対抗のコンペ形式で企業へ企画をプレゼンします。今回は、オムロンヘルスケアの若手社員が各チームに1人ずつついて、学生と取り組みました。
※ ID-POSデータ:「いつ・どこで・何が売れたか」などの"商品"に焦点をあてたPOSデータに加えて、「どのような顧客が・どんな頻度で買っているか」といった"顧客の購買行動"をも読み取れるデータのこと。小売店のポイントカードなどからデータを抽出する。
たしかに、ゼミに入ったばかりの2年生から「企業のレクチャーが半分も理解できない」「先輩が何を話しているのかさっぱり分からない」と声があがることも(笑)。でも、このゼミは常に2〜4年生混合のチームで活動しますから、上級生に必死に食らいついていくと、みんな驚くほどの勢いで成長していきます。さらに、年次が上がって経験を積むと、よりロジカルに企画提案を組み立てられるようになります。大学は、自分から掴み取ろうとする意欲があれば、間違いなく自分の成長を実感できます。
ゼミは原則週2回ですが、追い込み時期になると毎日のように集まって作業をしますし、夏休みや春休みにもプロジェクトは継続することがあります。かなりの負荷ではありますが、このゼミで身につけた姿勢------情熱を持って、楽しみながらプロジェクトに挑む意識------は、将来どんな道に進んでも役立つはずです。
将来、多くの人は会社組織に所属するでしょう。そのとき、最も重宝される人材は「組織の力を引き上げられる人」です。組織内で自分がどんな役割を担えば成果物のクオリティーが上がるのか、どうすればメンバー全員のモチベーションを高められるのか------。時にぶつかり合ったり悩んだりしながら、学生時代のうちに、協働の難しさや面白さを体感してほしいと思っています。
社会に出る直前の大学時代をどう過ごすかは、人生に大きな影響を与えます。その大切な時期に最も多くの時間を過ごし、同じゴールを目指して励んだ仲間は、一生の同志になれるはず。そしてそんな同志の存在は、これから先の人生でぶつかる色々な壁を乗り越える大きな支えになると思うのです。
例年、卒業時には、ほぼ全員が涙してゼミを巣立っていきます。それほどまでに熱い想いで取り組んだ経験を、かけがえのない仲間を、ずっと大切にしてほしいですね。
※掲載されている教員・学生の所属学部・職位・学年及び研究テーマ等は、取材当時のものです。