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コミュニケーションと「移動」って、関係あるんですか?

はい。実は、

明治時代、「コミュニケーション」の訳語の一つは「交通」でした。
それから1世紀余り、今日の社会は、人・モノ・情報の「移動」がなければ成立しません。
2022年度から「メディア社会学科」「国際コミュニケーション学科」(仮称・設置構想中)の2学科体制となるコミュニケーション学部では、
この「移動」を切り口に、実学とアカデミズムの視座から、動きつづける社会のこれからを考えます。
新体制での学びについて、北村智教授、中村忠司教授、松永智子准教授が語り合いました。

コミュニケーション学部は
新たな2学科体制へ

── 来年度、従来の1学科体制から「メディア社会学科」「国際コミュニケーション学科」へと生まれ変わるコミュニケーション学部。2学科の特徴を教えてください。

北村 学科名に掲げている「メディア社会」とは、様々なメディアが日常に溶け込んでいる現代社会を指します。例えば私たちは、家族や友人、職場でのやりとりに、LINEやメール、Slackなどを日常的に活用しています。コロナ禍で、オンラインでの授業や会議、さらにリモート飲み会やリモート帰省なども普及しました。また、企業の広告・広報も、テレビや新聞などのマスメディアだけでなく、ソーシャルメディアも活用するなど、そのかたちは多様化しています。

このように、コミュニケーションに様々なメディアが活用されている現代社会を俯瞰し、メディアの特性、効果的な広告・広報のあり方、情報分析の仕組み、利用者の心理などを学ぶのが「メディア社会学科」です。

松永 「国際コミュニケーション学科」が学びのキーワードとして掲げているのが「移動」です。現代社会は、人や商品、情報が国境を越えて移動することで成り立っています。例えばコンビニで買うお弁当ひとつにしても、その原材料は中国産で、調理や箱詰めを担当するのは郊外の工場で働く東南アジア出身者、レジ打ちの店員さんは中東からの留学生だったりしますよね。

そんな私たちの足元にある国際化を「移動」という観点で考えながら、英語力や異文化理解のスキルや心、知恵を育てていくのが「国際コミュニケーション学科」です。

── 「移動」というキーワードについて、もう少し詳しく解説してもらえますか。

松永 「メディア史」の視点から言いますと、communicationという言葉が日本に入ってきた明治期、訳語の一つは「交通」でした。思想の伝達や人々の交流は、物理的な移動や運輸と密接に結びついていたのです。その後、電信や電話、ラジオ、テレビなど、遠く離れた場所を易々とつなぐ電気通信が普及していく過程でcommunicationと「交通」という言葉は切り離されていきますが、人やモノ、情報の移動のプロセスを想起させる訳語に立ち返ることは、コミュニケーションとは何か、その本質を捉えるきっかけになると考えています。やや大胆に言えば、「元来、コミュニケーションとは移動であった」ということです。

北村 「移動」は、今日の「メディア社会」を理解するうえでも重要な観点です。例えば、かつてテレビを見る場所といえばお茶の間でしたし、仕事は職場でするものでした。ところが、スマホやPC、タブレットなどの「モバイルメディア」が登場したことによって、移動中にもテレビや映画を見たり仕事をしたりするようになり、自宅から職場へ移動しても同じメディアを使うことが増えました。メディアの変化が「移動」を引き起こすという関係性がよく分かるのではないでしょうか。

変化の時代を
生き抜くために
「自ら学ぶ力」を

「メディア化」によって
「グローバル化」が加速した

── 新たな学部では、「メディア×国際」という掛け合わせを前面に打ち出していますね。

中村 メディアの発展とグローバル化の進展は密接に関わっていますから、その両輪で理解を深めることが、今日の社会を知るうえでは不可欠ということです。

北村 そうですね。その一例が、インターネットの普及による「メディア社会」化によって、情報の「グローバル化」が格段に進んだという事実です。例えば、かつてはアメリカで流行したものが数年後にようやく日本に持ち込まれるといった具合でしたが、いまはAppleの新サービスがリリースされれば日本からも同時にアクセスできますし、日本の出来事がニューヨークタイムズでどう報じられているのかもTwitter等ですぐに記事のリンクをたどることができます。メディア社会化によって、情報の国境が無くなったというわけです。

中村 私の専門分野「観光学」においても、メディアはグローバルな観光行動に大きな影響を及ぼしています。例えば、アニメや映画、文学、音楽作品などの物語の舞台を訪れる「コンテンツツーリズム」。2016年の大ヒット映画『君の名は。』は、中国や韓国でも次々公開され、東京・四谷の須賀神社などは突如、アジア各地から観光客が訪れる名所となりました。さらに、そんな“アニメ聖地巡礼”の様子がSNSで拡散されることで、人気はより過熱していきました。

コンテンツによって人が動くという現象そのものは、江戸時代の『東海道中膝栗毛』などのように、昔からありました。小説から映像へとメディアが広がり、さらにインターネットやSNSが普及したことにより、その影響力とスピード感が格段に増したというわけです。

松永 「メディア社会学科」と「国際コミュニケーション学科」でウェイトは違いますが、どちらに所属しても「メディア×国際」の関係性、すなわち、メディアを介したグローバル化について実践的に学ぶことができます。その環境は、本学のコミュニケーション学部ならではの強みだと思っています。

── ただし、情報のグローバル化が進んでも「言語」という壁がありますよね?

中村 その通りです。私たちが、英語力の向上や異文化理解を深めることを重視しているのはそのためです。一定の英語力があれば、コミュニケーションをとれる範囲が格段に広がりますし、読める文献も桁違いに増えますから。

とくに国際コミュニケーション学科では、1〜3年次に学科独自の英語科目があり、必修科目の「異文化理解」では、フィリピンや台湾、カナダなどで語学研修や就業体験を行います。もちろん、実施の可否は新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえて慎重に判断します。

コロナが終息したら、学生に伝えてあげたいのは「英語力に自信がなくても、まずは海外に出るといいよ」ということです。空港に降り立った瞬間、温度や湿度、匂いが違う。さらに、食べ物、建物、トイレ、コミュニケーションの仕方まで、とにかく圧倒的な違いを感じると思います。一方で、自分や日本との意外な共通点も発見するでしょう。びっくりしたり、ショックを受けたり、感動したり、といった実体験は何ものにも代え難いものです。自分の英語の未熟さを実感したら、それから必死に勉強すればいいのです。一度海外に出たら、きっとクセになると思いますよ。

海外での実体験が
打たれ強さと
柔軟性を育む

いまを相対化できれば
時代の変化も恐くない

── 高校生からは「将来、どんな仕事に役立つ学部なんですか」と聞かれる機会が少なくないのだとか。

北村 高校生の質問に率直に答えるならば、「どんな業界・どんな仕事でも役立つ」ということになります。というのも、生産年齢人口の減少が進む日本では、すでに東アジアを中心に多くの外国人労働者が就労しています。日本企業に就職したとしても、同僚や顧客が外国人だったり、仕事の委託先が海外であったりすることは珍しくありません。また、メディアと全く関わりのない仕事というのはほぼありませんから、その特性を理解し「人を動かすためにメディアをどう活用するか」を考えられる能力は有用なものだと思います。

異文化に柔軟に対応しながら、日進月歩で進化するメディアテクノロジーを使いこなす。これは今後、誰もが身につけるべきジェネリックなスキルなのです。

松永 それから、特に「国際コミュニケーション」というと、いまだに “外資系エリート”といったイメージを持たれがちです。でもいまや、グローバル化は私たちの足元で進んでいて、「海外で働く」ことだけが「国際人」ではありません。

現に、東経大の卒業生からも、府中市役所の窓口で外国籍の住民と接している、とか、八王子の人材派遣会社に勤めていて外国出身の人々に広告でどう訴求するか工夫している、といった話を聞くことがあります。私のゼミでも、ブラジル出身者が多数居住する関東地方の地元のコンビニを題材に卒論を書いた学生がいます。彼女は、店を訪れる人々とその家族の生活について調べ、外国人労働者受入をめぐる制度的な問題を指摘するとともに、「コンビニとしてどういうサービスをすれば地域貢献をしつつビジネスチャンスが広がるか」を検討しました。

メディアや国際コミュニケーションの知識・知見がきっと皆さんの想像以上に幅広い進路で生きるということ、そして、地元密着型のグローバル化に向き合う面白さについて、学生や受験生にもっと広く伝えていきたいですね。

── LINEやInstagramを毎日使う、外国人の友人がいる、という人は少なくないと思います。すでに身近なメディアや国際化を、わざわざ「学問」として学ぶことには、どんな意味がありますか。

松永 世の中が大きく変わりつつあるいま、「AIに仕事を取られるのでは?」「プログラミングができないと就職できないかも?」などと不安に思う人もいるかもしれません。でも、特に若い世代の皆さんには、新しい局面をワクワク楽しむ“馬力”を持っていてほしい。その助けになるのが、学問です。

例えば「メディア史」なら、19〜20世紀に始まる「メディア社会」の歴史を知ることで、いま起こっていることの何が新しいのか、違いはどこにあるのかといった視点を持つことができます。比較できるかどうかは、とても重要。いまにキャッチアップすることに精一杯になるのではなく、長い時間を相手にし、深掘りする学問に触れることで、いまを相対化して見る力がつく。それが、未来を前向きに考えることにもつながっていくのです。

北村 それは非常に重要な点ですよね。例えば「LINEが普及した10年間でコミュニケーションの何が変化したのか」を考えたり、あるいは「100年前といまを比べて、グローバル化の本質は変わったのか」を考察したり。いまはどういう時代なのか、そしてこれからどうあるべきなのかを考えることが、大学における学問の重要な役割だと思います。

それから、私は社会心理学をベースにメディアの研究をしていますが、SNSなどを「利用していること」と「理解していること」は少し違います。時折、学生から「LINEで既読無視されて辛い」「Instagramでいいねを意識するのに疲れた」「Twitterをブロックされて気まずい」といった悩みを聞くことがありますが、それは自分一人が感じていることなのか、それとも一般的に多くの人に起きることなのか、なぜそんな問題が生じるのか、といったことを考え、理解を深めていくのが社会心理学の領域です。やや大袈裟にいえば、より幸せに生きるための方法を探すのが学問の役割ということだと思います。

中村 私は大学教員になる前は企業に勤めており、国や地域の交流人口を増やすための施策づくりなどの仕事をしていました。働きながら大学院に通いましたが、大学院で「地域ブランドをどう作るか」などを学んだことが実際の仕事に活かせたことも多々ありますし、その仕組みを理論として理解できたことは実務にも役立ちました。「多角的な視座をつくる」という点に学問の意義があるのではないでしょうか。

新たな局面を
楽しむ「馬力」を
学問で身につけよう

30年後も活躍するために
大学で鍛えるべき力とは

── これから大学で学ぶ若い世代へ向けてメッセージを。

松永 自分の「好きなこと」を探しなさい、とよく言われると思いますが、私は「モヤッとすること」「心がざわめくこと」を大切にすることをお勧めします。不思議だ、なぜだろう、許せない、といった心の引っ掛かりが、皆さんの大学での学びの扉を開いてくれると思います。

北村 これはいつも学生に伝えることなのですが、メディアテクノロジーは日進月歩で変化していますから、いま大学で得た知識の一部は、10年後には古く時代に合わないものになります。つまり、この4年間で学ぶことが絶対の知識・スキルと思われては困るわけです。本学での学びを通して、常に変化に対応し「自ら学ぶ力」、そして様々な「問題を解決する力」を身につけてほしいですし、その力を獲得できれば、20年後や30年後の社会でもたくましく生き抜いていけると思っています。

中村 東経大のコミュニケーション学部は、1学年200数十名と規模が小さく、2年次からは原則全員がゼミに所属するので、教員と学生との関係性は非常に濃いものになります。そんな中で、自らテーマを見つけ問いを立て研究に取り組む、みっちりと丁寧な指導を受けるという経験は、人生の貴重な学びとなるはずです。そして異文化に触れる経験は、人を打たれ強くするし、変化への適応力を鍛えてくれるはずです。志ある人の挑戦をお待ちしています。

Kitamura Satoshi

北村 智

コミュニケーション学部教授。研究分野は、情報行動論、メディア・コミュニケーション論。主な担当科目は、ソーシャルメディア論、モバイルメディア論。

Nakamura Tadashi

中村忠司

コミュニケーション学部教授。研究分野は、観光学。主な担当科目は、国際観光論、グローバルインターンシップ、観光文化論。

Matsunaga Tomoko

松永智子

コミュニケーション学部准教授。研究分野は、近現代メディア史にみる国際コミュニケーション。主な担当科目は、現代メディア史、比較メディア史、ジャーナリズム論。