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【学生のみなさん】学長メッセージ ― 第1学期遠隔授業を終えて ―

 

― 第1学期遠隔授業を終えて ―

東京経済大学学長 岡本英男

学長の岡本です。学生の皆さんは、どのような夏休みを過ごしているのでしょうか。

 

第1学期は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、大学院などごく一部の科目を除いて「全科目オンライン」で行いました。無事第1学期を終えることができましたのは、学生の皆さんの理解と協力があったからこそと、教職員一同心から感謝しています。

 

もちろん、このオンライン授業には準備期間がきわめて短かったこともあり、多くの問題点がありました。そのことは、私がここ数日くり返し読んできた「2020年度第1学期遠隔授業アンケート記述」(途中報告の1120名分)からもよくわかります。

 

皆さんの多くは、オンライン授業では、常に時間に追われて、家にいるためにけじめも切り替えも難しくて大変だった、友人を作る機会がなかったので不安だった、と書かれています。これらのことから、各教科の課題の量が多過ぎたことが皆さんの心身に大きな負担であったこと、できることなら対面授業で先生や友人との関係を築いていきたいという気持ちが伝わってきます。  

 

他方、オンライン授業では、通学にかかる時間や衣服、食費、定期代などを考慮しなくても済むため、自分のしたいことを優先しながら効率的に授業に取り組めたという人も少なからずいました。中には、オンライン授業は時間の管理もしやすく、オンラインで得たメリットを実感するとともに、満員電車のストレスをはじめとした不必要なストレスがいかに多かったかを身をもって知ったという人もいます。当然、これらの満足度の高い人たちは後期の授業もオンラインでいいと思っており、普通の授業スタイルに戻ったとしても、オンライン形式という新たな授業枠組みを設けることを希望しています。

 

しかし、圧倒的多数の感想および意見は、オンライン授業は自分のペースで勉強できるという利点はあるものの、友人をつくる機会が少ないことなど、せっかくの学生時代にもかかわらずできないことがあまりにも多すぎる、そのことが残念でたまらない、というものでした。私には、大学のキャンパスで友だちと楽しい生活を送りたいと思う一方で、感染の不安もあるので当面オンラインでいいという気持ちの間で揺れ動いているように思えました。

 

以上のような皆さんの置かれた状況や第1学期の経験、そして教育研究機関として大学の使命、そして何よりも学生や教職員の皆さんの安心安全と心身の健康を第一に考え、第2学期の授業形態については、以下のような方針でいます。

 

新型コロナウイルスの現下の感染状況をふまえ、第2学期も遠隔授業を基本としつつ、一部の少人数授業においては、教員が希望する場合、対面授業を実施できるようにします。対象科目は、①実習、演習(ゼミ)、ワークショップ科目等の少人数科目、②「三密」を回避できる教室等に変更できる科目(履修者がおおむね50名以下)、③各教務委員会が対面授業を認めた科目、です。

 

なお、対面授業が実施される場合でも、地方在住の学生等、登校が難しい学生のために遠隔授業を併用することとします。したがって、現在地方にいて感染者が拡大している東京に来ることが不安な方、長時間の電車通学に不安を覚える方は、オンラインで勉強を続けることができます。

 

また、課外活動につきましても、大学が定める再開に向けての諸条件をクリアした団体から、段階的に再開してまいりたいと思っています。

 

もちろん、これらは現下の方針であり、今後の新型コロナウイルス感染症拡大の状況によっては、対面授業をすべてオンラインに切り替えざるを得なくなる可能性もありますが、その点はどうかご理解くださるようお願いいたします。

 

最後に、私から皆さんへもう一つのお願いがあります。それは、この夏休み期間中に読書の習慣をぜひ身につけてほしいということです。私が繰り返し述べていますように、読書は、思考の材料となる知識を増やし、視野を広げ、皆さんの思考力、想像力、判断力、共感力を鍛えます。

 

私は「東経大の教師が東経大生に薦める本」という形で、東経大の先生方が皆さんに推薦した本のリストを作成し、それを配布したいと考えていますが、ここでは私が皆さんにぜひ読んでもらいたいと考える本を5つあげたいと思います。この中の一冊でもぜひ手にとって読んでみてください。オンライン授業で一日中パソコンの画面とにらめっこして目を悪くしたと書かれている人が多くいましたが、そのような人にとっても本の活字は新鮮に映ると思います。

 

1.東京経済大学史料委員会編『大倉喜八郎 かく語りき』2014年

 本学はこの秋に創立120周年を迎えます。この本では、本学の建学の精神である「進一層」や「責任と信用」という言葉の由来、大倉商業学校創設の目的、同校の「伝統」とされてきた「実学教育」や「英語重視」の理由などが、大倉喜八郎自身の言葉で語られています。また、大倉喜八郎研究の第一人者の本学元学長の村上勝彦先生の丁寧な解説がつけられています。

 

2.城山三郎『雄気堂々(上・下)』新潮文庫、1976年

 本学の創立委員3名のうちの一人である渋沢栄一を理解するには、ちくま新書で出ている『論語と算盤』の現代語訳から入るのも一つの手ですが、私はここにあげた城山三郎の伝記小説を推薦します。この本を読むと、近代日本資本主義の父と言われる渋沢栄一のダイナミックな人間形成、そして経済や企業倫理に対する考え方が伝わってきます。この本の中で渋沢栄一と大倉喜八郎の出会いのシーンがあり、そこで喜八郎は「渋沢さん、わたしは金もうけより、事業をのばすことを考えています。金はつまり、事業の粕でしょう」と述べています。私は喜八郎らしさが出ているなと思います。なお、渋沢栄一の生き方に興味をもった人は、さらに津本陽『小説 渋沢栄一(上・下)』(幻冬社文庫)に進むのもいいと思います。

 

3.大沼保昭著・聞き手江川紹子『「歴史認識」とは何か』中公新書、2015年

 本の帯に「たたかう国際法学者の白熱講義。日韓・日中歴史問題の必読書」と書いている通り、この小さな新書のなかに大沼先生の深い学識と現代日本に対する強い思いが込められています。聞き手を務められたジャーナリストの江川紹子さんは「過去を振り返るためというより、将来の日本のありようを決めていく土台として、「歴史認識」は重要なのだ」と書いていますが、私もその通りだと思います。ぜひ、チャレンジしてみてください。

 

4.藤原てい『流れる星は生きている』中公文庫、1976年

 本書は、満州新京から乳飲み子を含む3人の子どもを引き連れて、北緯38度線を命がけで引き揚げてきた母親(作家新田次郎の妻)の記録である。さきにあげた『「歴史認識」とは何か』が戦前の植民地支配・敗戦後の日本の状況を歴史的・客観的に述べているのに対して、本書は一人の女性が敗戦下の壮絶な体験を心理描写も含めてリアルに書いている。もうすぐ戦後75回目の8月がやってきますが、戦争とは何かを知るうえで格好の著書と思われるので、大沼先生の本と合わせて読んでほしい。

 

5.長沼伸一郎『現代経済学の直感的方法』講談社、2020年

 この本は最近出たばかりで大変人気の本です。本の帯には「わかりやすくて、おもしろくて、そして深い。資本主義の本質をつかむ唯一無二の経済書!」と書かれています。著者は『物理数学の直感的方法』の出版で理系世界に一大センセーションを巻き起こした人です。「本書は一般の読書人、理系読者、経済学部の学生、ビジネスマンなど、広範な読者がいろいろな用途で使える本となっている」と著者が書いているように、ぜひ経済学部の学生だけでなく、他学部の学生の皆さんも手に取って欲しい。

 

以上あげた本の中には、私が週一回開催している学長ゼミで学生の皆さんと一緒に読んだ本もあります。学長ゼミは自主ゼミであるため単位をあげることはできませんが、本学の学生であれば誰でも参加することができます。ハーバード大学白熱講義で有名なマイケル・サンデルの本をはじめ、現代をどう生きるべきか、社会はどうあるべきかを主なテーマとして議論しています。興味のある方は、一度参加してみてください。

 

どうか皆さん、いい夏休みをお過ごしください。国分寺のキャンパスで皆さんに会える日を心待ちにしながら、私のメッセージを終えたいと思います。

2020年7月30日