言語選択

Search

日本語 ENGLISH

nc_お知らせ・nc_トピックス

【在学生のみなさん】学長より新年のメッセージ -オンラインでの交流について-

東京経済大学

学長 岡本英男

学長の岡本です。

新年明けましておめでとうございます。

皆さんに、このメッセージを書いているのは1月2日の朝です。

今年の年賀状には、多くの人が「昨年はコロナ禍で大変な日々となりましたが、今年はそれが終息し、平穏な日々の戻ることを願います」と書いていました。しかし中には、「コロナ禍は本年も続きますので、用心が肝要と思っております」という冷徹ともいえる文言が添えられた年賀状もありました。さらに、元日の新聞には「東京、過去最多の1337人が新たに感染、新コロナ、国内4500人超す」という一面の大見出しがあり、その後も感染症拡大のニュースが次々に飛び込んできます。このような状況下で私が皆さんに送る新年のメッセージは、いかなる環境にあろうとも、皆さんは学びをやめないだけではなく、積極的に学生同士の交流を図る工夫をしてほしいというものです。

昨年12月5日に、多摩地区にある6大学で構成された多摩アカデミックコンソーシアム(T A C)の教職員交流会がありました。そこで私は、オンライン教育に関する研究分野で著名な京都大学の飯吉透先生によるZoomでの基調講演「オンライン教育の可能性」の指定討論者を務めさせていただきました。飯吉先生とのやり取りの中で、私がもっとも強い印象を受けたのは、オンライン大学と呼ばれているミネルバ大学の現状とその可能性についての議論でした。
ミネルバ大学は2014年に開校された新しいアメリカの大学ですが、すべての授業をオンラインで行い、校舎やキャンパスをもっていません。しかし他のオンライン大学と決定的に異なるところは、全寮制で学生は4年間で世界の7つの国際都市を巡回し、滞在地で現地の企業、行政機関、NPO等との協働プロジェクトやインターンを経験しながら現地の人々との交流からも学ぶようになっているところです。

昨年12月の学長ゼミでミネルバ大学について議論したところ、一人の学生からは、授業中における学生の発言量などが瞬時把握される仕組みとなっており、管理的色彩が強すぎるのでないかという意見が出ました。大学はもっと自由であるべきだという意見です。私もその点は同意しますが、それでも私は、ミネルバ大学は21世紀の新しい大学像を示しており、大きな可能性を秘めた大学であると、考えています。とくに私が気に入っている点は、世界中から集まった学生が同じ寮に住み、そこでの共同生活を通じて相互に学びを深めていこうとしているところです。

オンラインで授業を行う大学と聞くと、学生同士の交流はほとんどないのではと考えがちですが、学生たちは各都市の質素な寮で一緒に生活しているため、授業の後もオフラインで議論したり、グループ・プロジェクトを通じて濃密な交流を行っているそうです。また、既存の大学のようなスポーツ・チームはありませんが、サークルのようなコミュニティは存在し、学生たちが自主的に仲間を募ってサークル活動を行っています。

もちろん、ミネルバ大学のような大学を誰もがすぐにつくれる訳ではありません。また誰もがミネルバ大学の学生になることはできません。しかし私は、本学をさらに「大学らしい大学」にするうえで、ミネルバ大学から多くのヒントを得ることはできると思っています。学生がオンライン授業の後も自主的にそれぞれの関心に則して議論を続けたり、また自主的にサークルをつくり、学業以外の面でも他者との文化的交流を積極的に図ろうとしている点などは、大いに学ぶべきではないでしょうか。

そのことと関連しますが、私は昨年12月26日に米山高生図書館長が主催する第5回オンライン読書茶話会に参加させていただきました。そこで私は、名古屋大学3年生の岩田恵実さんから『季刊読書のいずみ』(164号)に掲載された「そうだ、オンラインでサークルを作ろう。」というエッセイに書かれた体験談を直接聞くことができました。岩田さんは昨年4月に、Twitter 上で「サークル部員募集、一緒に本の感想を呟きましょう」と呼びかけ、そこに集まった10名ほどの学生と一緒にZoomを活用した名古屋大学読書サークルを立ち上げたそうです。このように、オンラインの気軽さをうまく活用して、コロナ禍にも負けず、学生同士の交流の場をつくっていった岩田さんの行動力を私は高く評価しています。

私は昨年9月の「第2学期授業開始にあたって」と題した学長メッセージのなかで、経済学部3年の渡邉将也君、経営学部3年の栃内大圭輝君、そしてコミュニケーション学部3年の高野瑞希さんが、オンライン上であっても主体性をもって授業に取り組んでいる様子、またゼミ活動のなかで多様なテーマについて画面越しでゼミの仲間と熱心に議論を重ねている様子を紹介しました。
今回は、ミネルバ大学おける学生同士の自主的な交流の様子と名古屋大学の岩田さんの活動を紹介しました。私は皆さんに、これらの活動を大いに参考しながら、正課の授業だけでなくサークル活動や学生同士の交流にもオンラインを積極的に活用していただきたいと思っています。また本学には、先に紹介した本学図書館によるオンライン読書茶話会やオンラインでの学長ゼミなど、本学の学生であれば自由に参加できる多くの交流の場があります。皆さんも思い切って、そうした交流の場に飛び込んでみて下さい。

このような経験を経ることによって、コロナ禍が終息し、対面での活動が全面的に再開できるようになったとき、そこでの皆さんの交流はいっそう輝いたものになると私は思っています。