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【在学生のみなさん】現代法部長から在学生へ「こんな時こそ名著・古典を読もう」

こんな時こそ名著・古典を読もう

現代法学部長

藤原 修

コロナ禍の外出自粛=「巣ごもり」はつらく、オンライン授業では本来の大学の学びからほど遠いものでしかないことを、学部長として大変申し訳なく思います。しかし、この「巣ごもり」環境が、大学生としての学びにむしろ絶好の機会を与えてくれている面があります。

コロナ禍以前のいまどきの学生生活では、腰を据えてじっくりと重要な参考書・名著の精読に励むということが行われにくくなっていますが、そのような名著にこの機会に是非チャレンジしてほしいと思います。それらの多くは難解で大部であり、一人で読もうとしても挫折してしまうことが多いものです。そこで、読みやすく挫折しないような名著をいくつかご案内いたします。

まず、法学の世界では大変よく知られた古典的名著でありながら、比較的読みやすくページ数も少ないものとして、イェーリング著・村上淳一訳『権利のための闘争』岩波文庫があります。この本は、法とは何か、権利とは何かという法学上の根本問題を、巧みな説明で明快に解き明かしています。法=権利とは、単に権利の目的である利益を守るものではなく、これと結びつく当事者の人格の擁護につながるものであり、そのために闘うことは、自分自身のためだけでなく、国家・社会に対する義務でもあると言います。

他に、同じく法とは何かという問題を考える上で参考になるものとして、川島武宜(かわしま たけよし)著『日本人の法意識』岩波新書、がおすすめです。この本は、西洋から法制度を導入した日本では、社会における実際の法意識と西洋的な法制度との間に大きな溝があることを、具体的事例を豊富に用いて解き明かしています。法学の学習に行き詰まりを感じている人に、ぜひ読んでほしい本です。

もう一つ、木庭顕(こば あきら)著『誰のために法は生まれた』朝日出版社、を挙げておきます。この本自体は最近刊行されたばかりで、古典的名著というわけではありませんが、木庭氏は古代ギリシャ・ローマの法と政治の専門家で、ギリシャ・ローマの古典文献を手がかりに法と政治の本質は何かを明らかにしています。しかも、本の作りが全く型破りで、映画やギリシャ・ローマの古典文学作品を素材に、木庭氏が中高生向けに対話式で実際に行った授業を再現する形で書かれており、大部ですが非常に読みやすく、しかも内容は驚くほど深く高度です。実にユニークで面白い本で、法学部生以外の学生にもおすすめです。

「巣ごもり」の苦難をどうか機会に変えて乗り越えてください。

大学も工夫をこらして皆さんの学びの環境を確保してまいります。