2022年1月29日(土)、東京経済大学教職ラウンジ開設5周年記念シンポジウム「高校教師のEYE~卒業生の教育現場から~」をオンライン開催しました。第一部では、高校教育改革の旗手として知られる金子奨教諭(埼玉県立狭山緑陽高等学校)をコメンテーターにお招きし、本学卒業生3名の若手高校教員から報告を行いました。第二部は、パネルディスカッションを実施しました。
東京都立青梅総合高等学校定時制課程で日本史を担当する成瀬大地教諭(2012年経営卒)からは、定時制高校ならではの苦労が語られました。定時制高校に通う日本語の読み書きに困難を抱える多国籍の生徒に対し、どのようにしたら日本史を伝えることができるか。プリントの漢字にはすべてルビを振る、英語、中国語、タイ語など、生徒たちの母語に翻訳したプリントを準備するなど、生徒たちの学びを支えるため、創意工夫のある実践に挑戦していることが報告されました。
埼玉県立戸田翔陽高等学校で商業を担当する本みゆき教諭(2005年経営卒)からは、自身のライフヒストリーを振り返り、高校時代に出会った先生の言葉で学びのモチベーションが高まり高校在学中に日商簿記1級を取得した成功体験。苦労も含め、これまでの経験が現在の生徒理解に活かされていることが報告されました。本教諭は、「生徒たちには高校生活で自分にとって幸せとは何かを考えてほしい。幸せは一人ひとり違うものであり、自分自身も出産を経験し、これまでとは違った幸せを感じていること、職場復帰後の自分の生徒に対する理解や教育観などの変化も楽しみだ。」と語りました。
長野県野沢南高等学校で英語を担当する高山友佑教諭(2012年コミュニケーション卒)は、長野県で9年間勤務する中で考えてきたこと、学んできたことが報告されました。その中で、誠実に生徒一人ひとりと向き合い、ペアワークやグループワークに挑戦してきたことが語られました。「クラスの担任となることには大きな責任や苦労が伴うが、得られる喜びも大きい。クラスがチームとなって、お互いを応援できること。」を目標に据え、学級通信の発行、学級日誌の充実、月1回の生徒面談等を通してクラスが「心の拠り所」となる安心できる環境づくりに取り組んでいることが報告されました。
コメンテーターの金子教諭から、3名が「EYE」(=生徒たちを看取る確かなまなざし)をもっているだけでなく、「I」=(自分自身が大切にしている世界)をもっていること、さらに、「LOVE」=(困難な状況にある生徒たちへの愛情)をもって、自分自身の学びを深めていることを高く評価いただきました。
本シンポジウムの参加者は、本学学生、卒業生、教職員をはじめ、他大学学生、現職高校教諭、大学教員など広範にわたり、延べ60名を超えました。参加者からの反響も大きく、数多くの感想が寄せられました。3時間半におよんだシンポジウムは、熱気と盛況のうちに幕を閉じました。
左から成瀬大地教諭、本みゆき教諭、高山友佑教諭
金子奨教諭(埼玉県立狭山緑陽高等学校)