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【大倉学芸振興会 学術講演会】社会思想史の大家 佐伯 啓思 京大名誉教授が講演 ~「グローバル資本主義の危機をもたらしたものは何か-経済学の「失敗」から現代を読み解く-」

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大倉喜八郎記念東京経済大学芸術振興会は、社会経済学、社会思想史の大家、佐伯啓思京都大学名誉教授を招き、2026年7月4日(土)、本学国分寺キャンパス大倉喜八郎進一層館(フォワードホール)で、学術講演会を開催しました。

佐伯名誉教授はアメリカで主流となっている経済学について「市場競争によって社会は最も効率的な状態となり、経済成長につながる」という考え方が根底にあると説明しました。その一方、この考え方には個人主義、自由競争、能力主義、効率主義、成長主義といったアメリカ的な価値観が前提として存在していることや、価値観に左右されない経済学の正しさを「科学」とする思想について紹介しました。また、アメリカ経済学は「教科書に載っているから正しい」と一概に肯定するのではなく、その背景にある考え方にも目を向ける必要があると指摘しました。

続いて、冷戦終結後のグローバル化について触れ、アメリカが自由民主主義や市場経済を世界へ広げ、グローバリズムを推し進めてきたと述べました。また、日本でも1990年代以降、構造改革や行政改革が進められ、アメリカ型の市場原理が浸透していったと説明しました。一方、日本は1980年代までは規制や行政の役割を残しながら経済成長を実現しており、必ずしも自由競争だけで発展してきたわけではないとの見方を示しました。

さらに、市場経済と資本主義は異なる考え方であることを説明しました。市場経済は市場の均衡を前提とする一方、資本主義は資本を拡大するために技術革新を繰り返し、既存の均衡を壊しながら発展していくものであると述べました。また、シュンペーターの「創造的破壊」に触れ、技術革新が新たな経済成長を生み出す仕組みを解説しました。そのうえで、アメリカでは金融や情報産業への資本集中が進み、巨大な国際金融市場やIT企業が形成された一方、グローバル化による社会のひずみも拡大したと述べ、その反発がトランプ政権誕生の背景にあるとの見解を示しました。

講演の終盤には、トランプ政権以降のアメリカについて、三つの方向性が示されました。

一つ目は、各国が自国を重視し、政府が経済へ一定程度介入しながら、自由競争や市場競争を修正していくこと。

二つ目は、AIなどの技術革新をさらに加速させ、新たな経済の基盤を築こうとすること。この中では、シリコンバレーの思想や、AI、宇宙開発といった話題にも言及しました。

三つ目は、個人主義や競争社会を見直し、家族や共同体、宗教的価値観を重視する社会を目指すというものです。これら三つの考え方を紹介しながら、アメリカ社会が大きな転換点にあるとの認識を示しました。

最後に、日本はアメリカの価値観に寄せ過ぎていると述べるとともに、日本人が持つ価値観とは何かを改めて考える必要があると語りました。
講演に引き続き行われた質疑応答では、ヨーロッパにおける民主主義や社会民主主義、現代におけるマルクス経済学の意義、反証可能性などについて質問が寄せられました。

  

関連リンク 大倉記念学芸振興会 学術講演会「グローバル資本主義の危機をもたらしたものは何か -経済学の「失敗」から現代を読み解く-」

  

取材:学生広報スタッフ 現代法学部2年 今福栄志