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在学生の皆さんに対する学長メッセージ

―第2学期授業開始にあたって―

 2020年9月17日   東京経済大学学長 岡本英男

 学長の岡本です。いよいよ9月18日から第2学期が始まります。学生の皆さんは、どのような夏休みを過ごされたでしょうか。私もこの夏休みは、少し学長としての仕事を離れ、自分の専門の論文執筆の準備をしたり、普段はなかなか読めない本を読んだりして、いつもよりリラックスした時間を過ごすことができました。

 第1学期は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、大学院などごく一部の科目を除いて「全科目オンライン」で行いました。このオンライン授業には準備期間が短かったこと、教員も学生もこの形式の授業に不慣れだったこともあり、一定の成果はあったものの反省すべき点も多くありました。全学教務委員会はその成果と反省すべき点、そして改善可能な点を明らかにするために、学生と教員に対して第1学期の遠隔授業のアンケートをとりました。私は、アンケートの回答のなかにあった1892名の学生の皆さんの意見、134名の専任教員の意見、そして142名の非常勤講師の意見をくり返し読みました。

 皆さんの回答の多くの文面から、大学のキャンパスで友だちと楽しい生活を送りたいと思う一方で、感染の不安もあるので当面はオンラインでいいという気持ちの間で揺れ動いている皆さんの複雑な心情が伝わってきました。

 このような皆さんの置かれた状況や気持ち、教育研究機関として大学の使命、そして学生や教職員の皆さんの安心安全と心身の健康などを総合的に判断して、第2学期は遠隔授業を基本としつつ、ゼミをはじめとした一部少人数授業においては、教員が希望する場合、対面授業を実施できるようにしました。しかし対面授業が実施される場合でも、地方在住の学生等、登校が難しい学生のために遠隔授業を併用することとし、地方にいて東京に来ることが不安な学生、長時間の電車通学に不安を覚える学生は、オンラインで勉強を続けることもできるようにしました。

 大規模講義は第1学期と同じようにオンラインでの授業となりますが、多くの授業で第1学期よりも充実したものになると私は確信しています。というのは、「私自身まだまだmanabaの諸機能、ツールを覚えて使えるようにしなくてはなりません。夏休みの間に練習し、秋学期に備えたいと思います」という一教員の声に代表されるように、教員の側も第1学期の経験を踏まえてさらなる創意と工夫をこらした授業を行なおうとしているからです。

 このことはC型のZoomの授業にも当てはまります。教員の回答には「前期は学生同士のやりとりがあまりなかったので、後期には他の学生との交流ができるような課題を含めたい」、「学生同士が何気なく雑談できるような場をオンラインでも作りたい」と言った声が多く見られ、そこから私は、オンラインでの授業の質を高めると同時に、学生同士のコミュニケーションの機会を何とか増やしたいという教員側の強い願いを感じとることができました。

 また、9月14日に開催された全学FD会議(対面で約20名の教員、Zoomで約70名の教員の参加)では、第1学期の遠隔授業の総括と同時に、2人の教員から「これからの授業スタイルとして対面・中継型授業をどのように行えばよいか」についての報告があり、それをめぐって参加者の間で熱心な質疑応答がありました。

 もちろん、授業の質の向上は教員側の努力だけで完結するものではありません。学生の皆さんの主体的な努力が不可欠です。では、どのような努力が必要なのでしょうか。

 私は、『父母の会ニュース』(第129号、2020年9月発行)に掲載された学生による第1学期遠隔授業についての体験談が大きなヒントになると思っています。

 石川ゼミに所属する経済学部3年の渡邊将也君は次のように述べています。

 「私はこの状況だからこそできることもあるのではないかと考えます。……自粛が必要とされている今、チームメイトと直接意見を交わせない、深い議論ができない、厳しい時期となっています。そんな中、今できることは知識の引き出しを増やし、メンバーとの再会に備えることです。日々の学習を怠らず、常に結果には貪欲であろうと思います。」

 また、小木ゼミに所属する経営学部3年の栃内大圭輝君は次のように述べています。

 「私は、授業がオンライン上であっても主体性を忘れずに臨みました。例えば、掲示板やアンケート機能を活用して教授に質問を伝え、回答を教示していただくことで課題における疑問の払拭に努めました。オンラインでは躊躇いがちな質問も、恐れずに試してみることが大切だと実感しています。……一方で、私が所属する小木ゼミでは、新型コロナウイルスに屈せず、個人で研究する多様なテーマについて徹底的に画面越しで議論を重ねてきました。」

 最後に皆さんに紹介したいと思うのは、今春、北海道の短大を卒業し、本学コミュニケーション学部3年に編入してきた松永ゼミの高野瑞希さんの次の言葉です。

 「熱心に取り組んでいるのはゼミです。ゼミでは、『移民をめぐる諸問題』について文献講読をし、メンバーと意見を交換しています。授業とは異なり、自分の意見を論理的に文章や口頭で伝える訓練になります。授業時間外でも、ゼミ内容に関連するニュースや記事を探し、ゼミ生同士で共有しています。メンバーの発想や発言には学ぶことばかりで、高め合える良い仲間に出会うことができました。対面で会える日を楽しみに、今だからできる学びや気づきを大切にし、過ごしていきたいと思います。」

 皆さんは、ここに紹介した3名の学生がコロナ禍の厳しい状況下にもかかわらず日々生き生きと学習していける、この秘訣はいったいどこにあると思われますか。

 私は、その秘訣は「この状況だからこそできることもある」、「メンバーとの再会に備える」、「主体性」、「恐れずに試してみる」、「画面越しにメンバーと意見を交わす」、「高め合える良い仲間に出会う」といったキーワードにあると思います。皆さんもぜひ、恐れずに先生に質問したり、クラスやゼミのメンバーと意見を交わしたりしながら、互いに高めあうことのできる良い仲間を見つけてください。

 第2学期からは、キャンパスに登校し、図書館や食堂もより自由に使用できるようになります。大学は皆さんの学習機会を保障し、皆さんの勉学意欲を高めるための環境を維持しつづけたいと思っております。私自身、週一回開催している学長ゼミを9月23日からZoomで再開します。学長ゼミは自主ゼミであるため単位をあげることはできませんが、本学の学生であれば、学部、学年を問わず、誰でも参加することができます。ハーバード大学白熱講義で有名なマイケル・サンデル教授の本をはじめ、現代をどう生きるべきか、社会はどうあるべきかを主なテーマとして画面を通して参加者全員で議論しています。興味のある方は、勇気を奮って総合企画課に連絡してみてください。

 皆さん、新しい学期を新しい気持ちで迎えましょう。そして、オンラインであれ、対面であれ、つねに前向きな気持ちで「自分は120年の伝統を誇る東京経済大学のメンバーである」という自覚をもって、主体的に勉学に励んでください。私はそういう皆さんを学長室から応援しています。