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Q: この数十年で
日本の総面積の約4倍分もの
植林をした国があります。
どこの国でしょう?

経済学部
佐藤一光准教授

東経大教員QUIZ

 
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A:中国です。中国はいまや
世界最大の“再エネ大国”であり、
“植林大国”でもあるのです。

中国は、世界最大の二酸化炭素排出国である一方、2010年以降は急速に再生可能エネルギー(再エネ)の普及を進めており、その導入量はすでにEU全体を上回っています。太陽光発電のためのソーラーパネルの生産量は世界第1位、さらに出遅れていた風力発電機のシェアも伸ばしており、いまや世界最大の“再エネ大国”といえます。また、世界各国の森林面積が減り続ける中で、唯一その面積を拡大している“植林大国”でもあります。

私が財政学者として注目しているテーマの一つが、この「森林」です。なぜなら森林は、CO2吸収効果によってカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること)に貢献するから。そしてもう一つ、再エネへの転換の際の「雇用創出」においても重要なカギとなりうるからです。

エネルギー転換にあたっては、影響を受ける産業や地域への支援、すなわち新たな雇用をいかに創出するかが大きな課題です。このことは、北海道夕張市などの旧産炭地域の事例からも分かるでしょう。しかし、「太陽光」「風力」が普及しても、ソーラーパネルや風力発電機の大半を輸入に頼っている日本では、それほどの雇用創出は見込めません。そこで着目しているのが、「木質バイオマス」です。間伐材による発電に加え、植林促進や熱利用で潜在資源を有効活用できます。林業が活性化すれば、地方部でも多大な雇用を生むうえ、森林整備の促進は、生物多様性の保全や災害防止、水源涵養にも貢献します。冒頭で触れた“植林大国”中国でも、約20年後には間伐の時期を迎えますから、今後「木質バイオマス」の重要性はより高まるとにらんでいます。一方で、価格競争力の面では太陽光や風力に劣りますから、普及拡大のための適切な仕組みづくりも大切です。

財政学とは、いわば「みんなのための経済活動」について考える学問です。環境やエネルギー、雇用のほか、医療、介護、保育、教育など、関わるテーマは多岐にわたります。皆のためになることを考えてみたいという方、ぜひ一緒に研究しませんか。