「国分寺レイディオ」は国分寺のひと、自然、歴史などを紹介するポッドキャスト番組(音声のみの番組)で、地域連携センターが制作・運営をする新たな取り組みです。
「『カフェ』から国分寺は創られる」のタイトルは、カフェ文化研究者である飯田 美樹さんの著作「カフェから時代は創られる」(2020年 クルミド出版)に大きな影響を受けています。
飯田さんはこの本の最後に次のように書かれています。
「カフェはただコーヒーを飲み、ケーキを食べに行く場所ではない。カフェから世界は変えられる。カフェから時代は創られるのだ」
飯田さんが紹介されているように、パリのカフェは実際にこのような役割を果たしてきました。例えば、シモーヌ・ド・ボーヴォワールや藤田 嗣治などは、パリのカフェに通い始めた頃は無名の若者であり、そこで人と出会い交流してゆく中で後に歴史に名を残す人となってゆきます。カフェは人と人が出会い新しい何かが生まれてくる場所なのです。
「国分寺レイディオ」第2シーズン「『カフェ』から国分寺は創られる」では、国分寺のまちの特長である
・居心地の良い場所を創ろうとする(あるいは求める)人たちの多さ
・1970年代から続くサブカルチャー、カウンターカルチャーの風土
・組織を求めない店主への共感(個人店の多さ)
について、「カフェ」という視点から掘り下げてゆくことを目的としてお届けします。
2023年11月に誕生した、国分寺で最も注目のカフェ「喫茶ソラクラゲ」の3人の共同代表の方々(全員20代半ば)をゲストにお迎えし、お話をうかがいました。
国分寺のまちで人や店などと出会うことで、大げさに言うならば人生が変わった(自分で自分の人生を変えることになった)ゲストの3人の方々がどのような思いを持ち、どのように「喫茶ソラクラゲ」という「場所」つくりあげていったか(いこうとしているか)を紹介することから、ひとが憩い緩やかにつながる場所としての「カフェ」をつくるということの意味や意義(そして喜びや苦労なども)を浮かび上がらせることができればと思います。
1968年の「部族」(国分寺に居たヒッピーたち)による「ほら貝」、1974年の村上 春樹さんの「ピーターキャット」、1977年からの中山 ラビさんの「ほんやら洞」やそれに続く店が現われていったことによって、70年代サブカルチャーのまち国分寺と言われる状況ができました。それは現在においても国分寺のまちに流れる文化の底流を成しています。
この回では、20世紀の中頃から国分寺のまちにどのように「カフェ」文化ができ上がっていったのかを、「喫茶ソラクラゲ」共同代表の鈴木 弘樹さんに聞き手になっていただき辿ってゆきます(が話はかなり横道にそれています)。
国分寺の「カフェ」文化を大きく変えた、2008年から起こった出来事を取り上げます。
それは、現在の国分寺の「カフェ」文化を牽引する3つの「カフェ」がほぼ同時期に国分寺のまちにそろったことです。
2008年に「カフェスロー」が府中から国分寺に移転し、数か月後に「クルミドコーヒー」が誕生。翌年には「おたカフェ」が誕生するということがほぼ同時に起こったのです。
3つの「カフェ」の店主の方々が、今日までお店やイベントなどでされてきたことを一つ一つ取り上げてもそれはすごいことです。
しかし、国分寺のまちにとって本当に大きかったことは、「ぶんぶんウォーク」という極めてユニークな自主性の高い地域イベントが立ち上がり、「地域通貨ぶんじ」が導入されるなかで、3人の店主の方々も中心となって国分寺のまちのお店やひとが緩やかにしかし確実に結びついたことなのです。国分寺のまちの「カフェ」文化のユニークさの本質(「アクティブなサードプレイス」とでも言うべきでしょう)はここにあるのではないかと思います。
「発信」をテーマに、サードプレイスとしてのお店の紹介と今後の展望を「喫茶ソラクラゲ」の3人の共同代表の方々とともにお送りします。
2001年からの「カフェスロー」、2008年からの「クルミドコーヒー」による「発信」は、「カフェ」からの発信を一段違うステージに押し上げました。
個人経営の店(特に飲食店)が、ビジネスの観点からすると過剰とも思える「発信」をすることは、自分たちの生き方や価値観を理解して共有してもらうことでつながりたいというある種の表現なのではないかと思います。
なぜ「発信」するのかといったことを考察しながら、中央線沿線の「発信」するサードプレイスを紹介し、そのようなお店がつながっていったらおもしろいのではないかといった展望についてもゲストの方々と一緒に考えてゆきます。
前回に引き続き、パーソナリティはライターの近松 佐左衛門さん、番組録音・編集とBGM作曲・演奏などは株式会社モジュールとミュージシャンのあらい ごう(シタール、バイオリン奏者)さんが担当しています。
2024年5月 地域連携センター 笹川 克也