「クーリング・オフ」「インターネット通販」「マルチ商法」といった用語は、中高の家庭科や公共の授業でも取り上げられていることから、消費者問題に関する法律は法学のなかでも大学生にとって身近な分野でしょう。この授業では、身近な消費者問題を取り上げ、「この場合はどうなるのか?」と疑問を持つことをきっかけに社会への関心を持ち、自分の生活と法律がどう関連しているのかという思考力を身に着けることを目指しています。
消費者問題では、「だまされる方も悪い」というように被害者の自己責任が追及されることが多々あります。しかし、消費者被害は、事業者との情報量や交渉力の格差や、事業者による行動バイアスの利用により、消費者の正しい選択を妨げる構造となっています。最近よく耳にする「ダークパターン」は、ユーザーの意思を巧妙に誘導するものの例です。
法学の用語が難しいから法学の勉強が苦手と感じる人も、消費者問題を自分事化して捉えると、法学を勉強する面白さを感じられると思います。

この授業では、多様な民事裁判手続について、事例を挙げながら、概要を説明します。私自身が裁判官や法改正立案担当官を務めた経験から、「なぜこうした立法になっているのか」「実際の裁判で問題になることは何か」など、なるべく実務的かつ具体的な部分に力点を置いて解説しています。これは法律の専門家をめざす人でなくても、現代に生きるすべての人に必要な学びです。例えば、就職先や取引企業の倒産に遭遇してしまったらどうするか。親戚が遺した空き家をどうすればいいのか。成年後見制度はどのような時に活用できるのか。相続の遺産分割がスムーズにいかないときにはどうするか――。誰もが人生で起こりうるこれらの問題も、この授業で扱う民事手続の範疇です。
学生の皆さんに伝えたいのは、「法律は暗記するものではない」ということです。法律には常に理由があり、ルールは社会の形に応じて変わっていくもの。経済など最新の情勢も理解しながら、私たち一人ひとりが考え続けるべきものだと思うのです。